埃立つ時代の埃の中で



人の渦の中で



立ち止まり



地図を広げた



怖れを描くと地図は消え



希望を描くと微かな光に包まれる



明日への地図は何処にあるのだろう



広げた地図は幻だった



埃立つ時代の埃の中で



街の喧騒の中で



空を見上げる子供たち



羽ばたく鳥たちを視線が追いかける



空からもらった青い帽子



海からもらった青い靴



大地からもらった流れる血



未来を夢見ることの中にだけ現在が存在する



生命の群星が瞬き



またひとつ



流れた



振り返ると何も無い



眼を凝らすとぽっかりと



宇宙が広がっている



来し方の憂愁は懐かしく



ぼうぼうと風が吹き抜ける



万物は移ろい



広がる風景への憧れは



限りなく俺を誘う



沈丁花の香りのように



朧に輝く月のように



音もなく俺を誘う



砕け散る氷河のように



輪を描く生のように



埃立つ時代の埃の中で



加速する時代の中で



今日も浮雲と歩く



生よ 生よ



豊かさの中でなぜ飢える



幸福も不幸も悩みの種なのか



全てを明日に伸ばし何を待つ



嘆きの壁で眠り続ける賢者たち



戦う相手を知らない兵士たち



埃立つ時代の埃の中で



混沌の街のくたびれたベッドで



おまえの声で目を覚まし



光と影を確かめた



疼き続ける傷跡で



命の温度を確かめた



永遠の境界線に向かって



今日も歩く



揺れる命の炎を道しるべに



今日も1日を歩く



土手のタンポポ



綿帽子が飛んでいった



あの頃の1年は今日の1日



あの頃の50000年は今日の1日



今日の1日は静かな花



今日の1日は猫のあくび














         2006年2月20日 イスタンブール