旅の空からの伝言


2005年5月10日 ビーニャ・デル・マルより


僕は大地の恵みを、人々に手渡したい。

歓喜を広めることが、僕の使命なのだ。

それを僕は、戦いの中で知ったのだ。

by パブロ・ネルーダ







■SKADE・えみさんへのレスポンスより


庭の桜は今年も綺麗に咲きましたか。

花の仕事は今も時々やってるんだな。

一緒にアレンジメント教室のBGMを選んだ時のことを良く憶えている。

「けして最大瞬間風速ではないけど、一生という長さの中で、一番多くの愛情を注げる人」

結婚を控えて、旦那さんになる人の事を、そう表現した江美が良いなあと思ったよ。

「イルポスティーノ」を見たばかりなんて、もの凄いタイムリー。

俺もそこはかとなく好きな映画。

憧れが切なく美しい映画だよね。

撮影が行われたポローチダ島(イタリア)にも是非行ってみたいと思ってるんだ。

またスカーゼのみんなに会える日を楽しみにしている。

りおんちゃんはまだ俺を怖がるかな。

元気で!

ライフを楽しんで!







■Masaくんへのレスポンスより


無事に旅が続いてるようで何より。

東欧から中東へ。

これからは日々状況の変わる場所だから、特に安全第一で。

約1年続いた俺の南米の旅はカウントダウン。

また何処かで!







2005年5月12日 ビーニャ・デル・マルより


ビーニャ・デル・マルは数日穏やかな日が続いています。

一昨日は鯖(しめ鯖、南蛮揚げ)とイカフライ。

昨日は鮭(刺身、塩焼き)とムール貝のスープ。

今日はホタテを買ってきました。

8個、1000ペソ(1ドル=580ペソ)

獲れたばかりの魚を漁船から直接売っている市場へ行くのが日課となっています。

桟橋が伸びていて、海には愛嬌のあるアザラシがいます。

今日は7頭も見ることが出来ました。

目玉がこぶしくらいある巨大な烏賊をバクバク食べていました。

バルパライソを歩いて書いて夕日を見てワインを飲んで1日が過ぎます。

口笛はジャンヌモローのつむじ風。







■やじまくんへのレスポンスより


ずいぶんと忙しそうだけど、充実してるなら大丈夫だろう。

忙しい時間の中でしか感じられないことを楽しんで下さい。

大人が心からの笑顔で楽しみながら生きる。

それが一番の教育。

そして今の日本に欠けていることだと思う。

子供たちから学ぶことは多い。

俺も以前はずいぶんと忙しかった。

自分の年齢なんて覚えていられない。

めまぐるしく過ぎる時間の中で、毎年変わる年齢なんて覚えてる暇も無い。

それくらい忙しかった。

自分で忙しくしていたという側面もある。

そんな時期があって、今がある。

俺は出来上がった写真を見る時が一番楽しい。

それを見てもらってあれこれ話すのも楽しいな。

やじま君も楽しみいっぱいだね。

楽しいが広がってゆく写真展。

成功を祈っています。







■中野跳輔さんへのレスポンスより


ラオスからの書き込みありがとう!

無事に着いて街を気に入って良かった。

ルアンプラバーン。

ホント良い町。

雨季が明けてメコンの水量が減ってゆくと、そこが少しずつ畑になってゆく。

朝の静けさとサンドイッチと人々の笑顔と辛い麺と夕日とラオビール。

のんびりとまた行きたい町。







2005年5月14日  ビーニャ・デル・マルより


「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」は洞爺湖。

「海辺のカフカ」は秋田。

「国境の南 太陽の西」はブエノスアイレス。

「羊をめぐる冒険」はサンチャゴ。

この旅で初めて読んで気に入ったのは太宰治と武者小路実篤。

これから読んでみたいのは夏目漱石。

「草枕」「夢十夜」「坊ちゃん」「明暗」「我輩は猫である」

最近は読むより書くモード。







■ライター浅野智哉さんへのレスポンスより


ある書物に出てくる場面を思い出した。

砂漠を横断するために案内と荷物の運搬を求めて砂漠の民を雇った。

キャラバンは順調に進んだが、ある地点から全く前に進まなくなった。

「金を払ってるんだから先に進んでくれ」という依頼者に対して

「ここに来るまで急ぎすぎた。物事は決まった速度でしか進まない」と彼らは答えた。

浅野くんは表現者のことや客観的事実を、第三者に対して伝える立場だから

どうしても「なぜ」という疑問は必要だよね。

俺は「なぜ」に到るまでの時間が必要なのだと思っている。

(浅野くんに対して、こんなことを言う必要もないし、失礼でもあるのだが)

思いを持って臨めないライターのインタビューは疲れる。

俺は傍から見ているだけで取材を受ける人が気の毒になる事がある。

能力って人柄や誠意の占めるパーセンテージが思ってる以上に高いと思う。

ただ日本は忙しすぎる。

急ぎすぎている。

多くの仕事を抱えて思いを昇華出来ずに資料にざっと目を通しただけのインタビュアーは多い。

その場限りの「なぜ」「なぜ」「なぜ」

そうなってしまうのも今の日本では無理もないのかなとも思う。

人は永遠を求めるらしい。

そしてパラドックスに陥る。

便利さを追求して、速度を速める。

速度を速め、出来た時間で、もっと働いてしまう。

もっと忙しく働いて金を稼ぎ、便利な生活を維持するために、さらに金が必要となる。

永遠は青い鳥。

今過ごしているこの一秒の中にも宇宙は全部入っている。







2005年5月16日 ビーニャ・デル・マルより


ビーニャ・デル・マルにいます。

海に夕陽を見に行くのが日課となっています。

昨日は海に潜っていた人(たぶん密漁)からアワビを購入。

大皿に山ほどの刺身がたったの300円。

ゆっくり歩いて、たくさん食べて。

エネルギーが溜まって来たのを感じています。







■プリマヴェラさんへのレスポンスより


自分は何かをしようとする時に父親によく「なぜだ」と聞かれます。

いつも上手く答えられません。

今思うと父親は答えを求めるというよりも、意思を確認していたように思います。

旅をしながら、時々、なぜ旅をしているのだろうと自問しています。

ラテンアメリカの人はよく声をかけてくれます。

こちらが理解してなくても当然のようにスペイン語で話し続けます。

そんな場合「ノーエンティエンド」(理解できない)と答えるよりも、

「エスパニョール、ポキート」(スペイン語は少し)と答えた方が、

より良いコミュニケーションになります。

否定的なことを言葉にする時、少しだけ注意します。

発することが自分自身の単なるストレス解消になっていないか。

自分の好きなことを嫌いと言われただけで、自分が否定されたような気持ちになる人もいる。

そのことは忘れないようにしたい。

相手によって言葉を選ばざるを得ない。

嫌いは嫌いで良いと思うのです。

共通点を持つ者同士のコミュニケーションは楽しいのですが、

お互いの違いを認められる関係も大切にしたいのです。

さまざまな視点や価値観。

それらを同時に持てるようになることが旅の目的のひとつでもあります。

誰もがより良い生き方を求めて旅をしています。

それぞれがそれぞれであることを尊重できる世界が良いですね。

新しい仕事へのトライ。

是非是非、楽しんで下さい。







2005年5月18日 サンチャゴより


サケ。

アジ。

アワビ。

ホタテ。

サバ。

ハマグリ。

ウニ。

イカ。

アナゴ。

ビーニャ・デル・マルでは毎日毎日、海産物を満喫。

サンチャゴに戻って来ました。

寒い寒い寒い。

街を取り囲んでいる山々は雪化粧。

毛糸のパッチ(黒)で力道山ごっこ。

夕飯は牡蠣飯です。







■Shigeへのレスポンスより


登山家。

坊主頭。

パンチパーマ。

スペイン語学校。

カポエイラ教室。

でもバリバリのサーファーなんだよなあ。

サーフ・ボード持って南米の旅。

フットワーク軽いしげの旅はなかなか見事だったよ。

熱いコラソンに触れて俺の南米も喜んだ。

ありがとう!

親切にしてもらったこと。

学んだこと。

得たもの。

それらを日々の生活の中でどのように活かしてゆくか。

忙しい日本では埋没してしまいがちだけど絶対にやらなくてはいけないことだと思うんだ。

親切にしてもらうだけ。

自分が良い思いをするだけの旅なんてださい。

(ビーチの掃除をしながら波に乗ってたしげを俺は誇りに思う)

旅の借りは、自分の生き方で返す。

自戒と共にそう思っている。

旅は終わらない。

もっとドキドキしよう!







■よりこさんへのレスポンスより


生命とは現象であり常に変化するものである。

日々変化する自分を感じています。

でもそれは変わらないということでもあるんだ。

感じた思いをよりちゃんの言葉で伝えてくれたから

俺も「なぜ」を楽しく思ってみた。

南米の風景はあまりにもでかくて、写真に収まりきらない。

だからシャッターを切らないことが多い。

(対象に寄って撮るのが好きというのもある)

「水曜日の光 午後7時の闇」にアップしたのは写真のデキとか気にしないで

毎日のように見に行っていたサンセットの風景を

出来る範囲でぼちぼち撮った写真だからじゃないかなあ。

それと、よりちゃんの強く開けたニュートラルな心が

広さや自分の場所を写真の中に見るんじゃないかとも思った。

圧迫も理屈もいらない。

俺は元気です。

こちらこそ楽しんでもらえて嬉しいよ。

ありがとう!







2005年5月20日 サンチャゴより


ひさしぶりに荷物を整理しました。

一度も使ってないけれども大切にしている物があります。

ある一枚の紙もそのひとつ。

医務室を備えた日本大使館の一覧表です。

(日本語が多少通じる・世界中に62箇所ほどある)

出発前に色々と相談にのってもらったドクターが「もしもの時に」と持たせてくれました。

「なかなか出来ないことです。私の分まで世界を見てきて下さい」

最後にそう言ってくれた彼の言葉も思い出しました。

多くの人に支えられて旅をしています。

2004年6月14日、夜のコロンビアに飛んで来た南米。

赤道。

マチュピチュ、ナスカ、クスコ。

標高3000mを越えるアンデスの村々。

チチカカ湖の島々。

すり鉢状の都市ラパス。

地球の裏側にあるオキナワ。

ウユニ塩湖。

世界最南端の町ウシュアイア。

パタゴニア。

サルバドールのカルナバル。

弓場農場での日々。

南米で生きる日系の人々。

大人の街ブエノスアイレス。

数え切れないほどの風景と、そこに暮らす人々との出会い。

明日、南米を離れます。

南太平洋を西へと飛びます。

まずはイースター島。

今まで無事に旅が出来たことに感謝します。

出会えた全ての人に感謝します。

両親をはじめ日本で待っていてくれる多くの大切な人に感謝します。

そして、静かな振動を通して旅を見ていてくれた方にもスペシャルサンクス!

ありがとう!

旅は終わらないけれど、また新しい旅立ちです。