旅の空からの伝言


2005年12月9日 カトマンズより


初めてインドに行ったのは2001年のことでした。

何も調べず酷暑期に行ってしまい、気温は連日45度以上。

体調を崩し発熱した状態で歩いたインドは今までで一番印象深い旅です。

「インドに負けた」と感想をもらす旅行者が少なからずいました。

「インドに負けないように」と髪を剃って来た女性や

「インドにリベンジに来た」という若者にも会いました。

インドは大好きになるか、二度と行きたくなくなるか、意見が極端に分かれる場所でもあります。

自分の場合は特別好きでも特別嫌いでもなく割りとフラットなスタンスです。

ただ次回は、それほど暑くない時期に時間をかけて廻りたいと思っていました。

19日間待ったインド・ヴィザをやっと手に入れました。

明日、カトマンズを離れます。

まずはラクソウルという国境の町に入りブッダガヤを目指します。

様々なことを考える機会を与えてくれるインド。

色々な意味で修行だと思っています。


■灼熱と祈りの中で:http://www1.u-netsurf.ne.jp/~silent/ind-01.htm







2005年12月15日 バラナシより


なんだ3階に行けばお湯が出るんじゃないか。

やはりお湯を浴びるのは気持ちが良い。

食べるものがある。

安全な水が飲める。

電気が供給される。

当たり前に思っていることが、実はとても恵まれていることに気付く。

俺はどうして旅をすることが出来るのか。

そのことを忘れずにいたい。

インドに入って7日目。

バラナシにいます。

此処では生も死もあからさまに鮮やかです。

今日もガンジスは流れています。







■mikiさんへのレスポンスより


Mikiのことだから忙しいながらもメルボルンでの日々に向けて

しっかり充電してるんじゃないかな。

アジアに来てから日本人に会う機会が増えて

その国ごとに旅行者の傾向があるように感じる。

オーストラリアとインドで会う旅行者の共通点は、単なる観光というよりも

何かを求めて旅をしている感じの人が多いことかな。

オーストラリアで会った人達が、英語の習得を通して世界を見ようとしているのに対して

インドでは自分の内側に向かう傾向が強い。

あまりにも日本と違う環境から自然と自分自身を顧みる機会が多くなるのだと思う。

俺も良い勉強をさせてもらっていると思うよ。

良いことも、そうじゃないと今は感じることも、

出会えた全てを引連れて次の年へゆこう。

良い日々の旅を!







■やじまくんへのレスポンスより


今のインド(バラナシ)は過ごしやすいよ。

河に入るには寒く、沐浴をしてる人があまりいないのが寂しい。

あと果物が少ないなあ。

インドで一番変わったと感じた点は紙幣がキレイになったこと。

以前のような土に返る寸前のボロボロ紙幣は見ていない。







2006年12月17日 バラナシより


ホーッ!

あざーす

あまーい

ジャンガジャンガジャンガジャンガ

インド人から教わる最新(でもないのかな)日本のギャグ。

(かとちゃんペッ!は健在)

日本人旅行者から聞こえてくる、芸能人誰と誰がつきあってる別れた話、などなど。

つくづく日本は不思議な国だと思います。

最近、外国人(怪しいインド人&韓国人旅行者)が使う日本語を幼稚に感じます。

彼らが話す日本語は自らを映し出す鏡。

自分を客観的に見てみる機会です。

カトマンズの日本食レストランで読んだ読売新聞のコラム。

ひとり土俵を守る朝青龍。

年間6度目の優勝を決めて土俵上で思わず泣いた。

勝ち続けなくてはならない者の孤独に強く感じるものがありました。

今年は無敗でクラシック3冠を取った強い馬がいるみたいですね。

有馬記念、見てみたいなあ。

競馬場で馬券を握り締めワインが飲みたい。

今、食べたいのは明太子、クラムチャウダー、タコ刺し。

みなさんはどんな年の瀬を過ごしていますか。

明日、バラナシを離れてカジュラーホーに向かう予定です。

今年の年越しはインドになりそうです。

デリー(喧騒と混沌の街)

ジェイサルメール(パキスタン国境近く砂漠の町)

ダラムサーラ(ヒマラヤ望む北部亡命チベット政府の町)

この何処かで過ごします。







■ライター浅野智哉さんへのレスポンスより


新作の完成&発売おめでとう!

俺は元気です。

旅に出てから自分の体の周期にも気付くようになり今の時期は特に注意している。

伝わってしまうようだね。

ありがたいことだ。

ネパールではちょっとムムムッと思うことがあったのだけど、

そのおかげもあり衛生面のハードルが上がったインドでは何事もなく過ごせています。

東京の空を眺めながらキーボードを叩き続けている。

そんな浅野くんの旅を想像しながら俺も旅を続けていた。

この嬉しい知らせもありがたいプレゼントだ。

旅をするように書いてきた本。

早く読んでみたい。

タイトル、発売日、発売元など是非改めて書き込んでね。

読んでみたいと思ってる人はたくさんいると思う。

ハシケンの詩が浅野くんの作品と重なる。

見え隠れする光。

吹き抜ける風。

生命の群星。

満ち引き。

あの場所では魂も良く見えるよ。

やっと出会える!







■チャリダー慎くんへのレスポンスより


なんかこれからの事がわくわく

で・・何が自分に出来るかと・・焦らず落ち着いて歩んでいきます。と、

うん。

まっすぐで良いなあ。

慎くん、書き込みありがとう!

あの頃、同じ屋根の下にいて、一匹の魚を分け合って食べていた。

その後のお互いの移動距離と時間を思うと

今こうしてまた話が出来ることをすごく尊く感じる。

自転車での3年の旅、お疲れ様!

慎くんがビーニャ・デル・マルで語ってくれた日本でのヴィジョン。

俺は良く覚えているよ。

旅の中でも、日常の中でも大丈夫!

良い日々の旅を!







2005年12月25日 アーグラーより


タージ・マハルでクリスマス。

カジュラーホーから13時間のバス移動。

(道を横切る牛の多さ!)

アーグラーにやって来ました。

世界一美しい建物と言われるタージ・マハルが宿の屋上から見えます。

ひさしぶりにネットにアクセスしました。

心が温かくなるようなメールがたくさん届いていました。

ありがとうございます!

インドの街にクリスマス・ムードは皆無です。

去年過ごしたブエノスアイレスでもデコレーションなどは、

ほとんど見かけませんでした。

(午前0時、25日になると同時にロケット花火の乱射大会!)

バンコクの街のクリスマスはかなりのものらしいです。

ミャンマーではサンタの衣装を着た仏像を見ました(しかも2月)

こういうのは得てして仏教国が節操無いようです。

それもまたよし。

メリークリスマス!

東京をはじめ日本もクリスマス・カラーに包まれているのでしょう。

ここインドにいると、そんな世界もあるのだなあと思ってしまいます。

日本で当たり前に営まれている生活が、

現実の世界ではないような錯覚を覚えてしまいます。

今日も何度も停電しました。

泊まっている宿は発電機を備えているので数分後には電灯が復活しますが

多くの商店や家々ではロウソクの火で凌ぎます。

電気が使える。

お湯が使える。

食べる物がある。

屋根の下で寝られる。

感謝したいです。

相変わらず今日もインドはインドです。

人、人、人の渦。

デタラメに走り回るリキシャー、バイク、車。

その中を悠々と無秩序に歩く牛。

鳴り止まないクラクション。

埃。

喧騒。

混沌。

糞尿の臭い。

旅行者から1ルピーでも多く毟り取ろうと近寄ってくる奴ら。

鮮やかに存在する善と悪。

こんなクリスマスも悪くない。

I wish your merry X’mas!

全ての命に等しく幸せな朝と夜が訪れますように。

日本は大変な寒さだと聞きます。

暖かくしてお過ごし下さい。







■中野跳輔さんへのレスポンスより


荷台に人々を満載したトラクターがトコトコ走る。

バスはクラクションを鳴らし続け、対向車線に飛び出し、

対向車と正面衝突すれすれに、前を走る車を追い越しながら走り続ける。

そんな中、水牛が道路の真ん中で立ち止まった。

のんびり歩いていた体にふんと力が入り尻尾が持ち上がる。

道路に糞がぼとぼと落ちる。

バスは当然のように、止まって待っていた。

彼のその行為が終わり悠然と歩み去るまで。

それはアーグラーからファーティープル・スィークリに向かった12月24日のこと。

インドに入って16日目。

水牛の肛門を見ながら、やっと少しはインドに馴染んできたかなと思った。

多分ぶつかるのが当然なのだと思う。

気後れしているのだとしたら、それはなぜなのか。

完全に馴れ合わ(え)ないのが旅人の特権。

篝火のように見え隠れする光を見据えながらも迷っている。

お互い楽しめると良いね。

トロントからの書き込みありがとう!

今は何処にいるのだろう。

良い年を迎えましょう。







■中野跳輔さんへレスポンスより


もっともっと自分を強くして、再び旅に出ようと、そんな風に決意した。

そうだったのか。

良い経験をしたね。

あー良かっただけの旅なんてつまらない。

自分の場合、今のような旅暮らしをしていると強くならざるを得ない側面が確かにある。

日本の平均的な感覚からはずいぶんと遠い所に来たと思う。

自分の強さが他者を傷つけていないかと気がかりな時もある。

まだまだ旅は終わりそうもない。

インドは相当にタフな国。

自分を抑えてわだかまりを残さないようにする日本的なやり方は通用しない。

簡単に飲み込まれてしまう。

今まで意識的に言わないようにしてきた「ノー!」をインドでは連発している。

毎日、ぶつかっている。

当然、精神の振り幅は大きい。

おもしろい。

インドはおもしろい。

でも明るい顔をして歩いている旅行者をあまり見かけない。

みんなぶつかっているのだろうと思う。

インドとぶつかり同時に自分自身とぶつかっている。

良い経験をさせてもらっていると思うよ。

5メートル歩くごとに「ゲンキデスカアー?」と声をかけてくる脳天気なインド人達の前を、

落ち込んでる時に歩き続けるのは修行以外の何物でもない。

さてさて、質問へのアンサー。

洗濯は宿でバケツを借りて手洗い。

ペットボトル(500ml)に入れて、洗剤を持ち歩いている。

時々は、さぼって、ランドリーサービスを使う(1キロ、50円くらい)

歩き廻るので1ヶ月くらいで靴下の底に穴が開く。

靴下を始め衣類はいろいろな国で何度も買い直したな。

シャツとパンツは日本から持ち出した物(MADE IN CHINA)が未だに使えている。

中国で購入した衣類がことごとく瞬間的に破れたことを思うと

日本の品質管理は素晴らしく優秀だと思う。







■やじまくんへのレスポンスより


今の時期インドにいる旅行者の多くは暖かいゴアに集まっている。

クリスマスから年越しにかけて様々なパーティーがあるらしい。

今年は世界一のバカ決定戦なるものも行われるとのこと。

騒がしい場所が苦手だしバカにも興味なし。

ワールド・カップのドイツも避けたい。

悠久の昔から変わらない暮らしが見たくてラジャスターン地方へ向かうことにした。

どんな一日であろうと大切に生きている人々に会いたい。

太陽、月、星、人々のひかり。

大切なものが少しづつ増えてゆく。

年を重ねてゆく醍醐味だね。







2005年12月28日 ニューデリーより


現在のインドの郊外には菜の花畑が広がっています。

綺麗に咲いています。

Tシャツ&フリースで過ごすのがちょうど良く、

気温は日本の3月くらいでしょうか。

ただ埃っぽくて空気の質も違い爽やかな印象はありません。

ニューデリーにいます。

途方も無く騒がしいこの街も朝6時は静かです。

遠くから汽笛さえも聞こえてきます。

早く起き出した人が鳴らす携帯ラジオの音が近くの部屋から漏れ聞こえます。

今日の夜行列車でジェイサルメールへ向かいます。

デリーから南西へ約800キロ。

18時間の移動です。

(予定通り着くはずのないインドの移動ですが)

ジェイサルメールはタール砂漠の真ん中、パキスタンとの国境まで100キロ。

12世紀に築かれ、かつて東西貿易の要所として栄えた街。

インド・パキスタンの分離により国境が閉ざされてからは、

近代化から取り残され、静かに眠る辺境の美しい田舎町だそうです。

放浪と旅に生きるジプシーの源流でもあります。

ジェイサルメール近くの砂漠の町で新年を迎えようと思います。

皆さんは、どんな年の瀬を過ごしていますか。

温かくして良い年をお迎え下さい。