ウブドにいるとおだやかな懐かしい気分になる。

        ひとつには田圃がたくさんあるからだと思う。


        三期作も可能なくらい恵まれた気候の中での稲作が

        バリのひとびとの誇りや伝統文化を支えているのだろう。


        あぜ道で写真を撮っていると彼方から農夫が歩いてきた。

        「こんにちは。」

        微かに表情がうごいた。

        彼も何か言ったようだが声は聞こえなかった。

        すれ違った後、何度もこちらを振り返りながらやがて見えなくなった。