|
唄声は奇跡。
唄声は宝。
唄声は祈り。
始まりの時から、ずっと、響いていて。
いつの間にか染み込んで、そっと広げて。
苔むした雨降る島で千年生きてる巨樹が唄うような。
岸田劉生が描いた、赤いおべべのおかっぱの童娘が唄うような。
全てを包み。
ニライカナイから風に乗って、海を越えて、届いたように。
太陽いっぱいのマングローブの森の気泡のように。
山深い谷に降る雪が、水面に触れた音のように。
全てを許し。
始めの雨粒が向日葵の上で、踊り、はじけたように。
うたた寝の縁側に松虫が、運んできたように。
歩いて歩いて道に迷った夕焼けの、橋の上で聞いたように。
全てを包み。
生きている奇跡のような。
永劫の宝のような。
全ての命の祈りのような。
|