「ありがたいことに、皆さん

         寒くないですかと声をかけてくれます。

         もう、なれました。

         来た日には、雪もちらついて、うれしかったです」


        やちむんは沖縄から冬の東京にやってきた二人組。

        フォークギターとバイオリン。

        沖縄では、かなりの人気者だそうだ。

        今日は六本木にある沖縄料理屋でのライブだ。


         初めてギターをもった中学生から湧き出たような

        きどらない、まっすぐな唄とメロディーが演奏される。

        そして、商品になった音楽が失ってしまった

        荒削りな純粋さを持ちながら、沖縄の風景が歌われる。

        ギターの弦を切りながら熱いステージが続く。


        お客を笑わせリラックスさせる言葉の端々に

        あたたかさ、やさしさがにじみ出る。

        人生がかいま見える。


        ざりがにパンツ・セミとりランニング。

        夏の情景がよみがえる。

        青空。入道雲。麦わら帽子。

        永遠に終わらない少年の日の夏。


        テーブルに置かれた彼らのチラシにはこう書かれていた。

        “夏のにおいを思い出しましょう”


        窓の外の首都高を流れる車のランプが遠ざかった。




                          2001年2月15日



                 *沖縄のことば:やちむん=やきもの
                             :ちむ=こころ