ある夏の日、キリギリスが歌を歌っているとアリが通りかかりました。

とうもろこしのつぶに押しつぶされそうになりながら、よたよたと運んでゆきます。

キリギリスが呼び止めました。

「こんないい天気なのに、なにをそんなに働いているのさ。もっと楽しみなよ。ぼくみたいに」

「冬にそなえて、食べ物をためているんだよ。きみもやっておいた方がいいと思うけど」

「いや、歌をうたうのが、ぼくの生き方なんだよ」

アリはまたよたよたと運んでゆきました。


冬になりました。

アリは夏の間の蓄えでゆったり過ごしていました。

そんなある日、キリギリスのコンサートが開かれました。

夏の間、練習に励んだキリギリスは、たいそう歌が上手になっていて会場は大喝采です。

出かけていったアリは、もちろん、とても楽しみました。

キリギリスは、よい音楽のお礼にと、アリから食べ物を分けてもらいました。

夏に出会った時よりも親しくなった二人は、仲良く冬を越しました。



俺はアリ。キリギリスは俺。