ベランダのねむの木にカマキリがいた。

   マンションの4階にあらわれた突然の訪問者。

   みずみずしいミドリの体が周囲の植物に
   とけ込みつつ強く存在を主張している。

   その細く美しいフォルムに、しばし時を忘れて見とれた。

   しばらくしてカマキリの視線の先にテントウムシを発見。
   黒い体に赤い星がふたつ。
   体はちいさく濡れたようにぴかぴかしている。

   カマキリはテントウムシをじっと見ている。
   食べようとしているのだろうか?
   こんな時、テントウムシを助けるべきなのか?
   テントウムシを食べることにより、カマキリは生きてゆける。
   このまま自然にしておいたほうがいいのだろうか?

   お湯が沸いた。お茶を飲もうとしていたのだ。

   カマキリからテントウムシまでは、かなりの距離があるので
   この命題はそのままにして、ひとまずお湯を止めに行った。

   すぐに戻る。 
   目を疑った。
   カマキリはおおきく移動していた。テントウムシがいた場所に。
   おおきなカマで口をぬぐいながら満足そうにしていた。

   命がつながってゆく。