シーサーがお出迎え。

           沖縄第一ホテルにチェック・イン。


           ここは沖縄で一番古い風流な宿。

           料亭を改造して作った7部屋だけのちいさな宿は

           ホテルと言うよりも何だか

           遠い親戚の家にやって来たような雰囲気がする。

           大江健三郎さんも常宿にしている。


           焼き物や書籍に囲まれたロビーで

           74歳になるモダンなおかみさんと話す。

           まどろむような時間が、ゆっくり流れる。


           戦時中の話を聞かせてもらった。



           満州のアイスクリーム屋さんで

           偶然、日本人の青年と同席した。

           彼は、明日の朝、特攻隊として飛び立つのだった。

           つかの間のおしゃべり、やすらぎ。

           すれ違う運命。

           動かない歴史。


           命を捨てる事が名誉であった時代。

           当時のおかみさんも

           お国の為なら喜んで命を捨てようと思っていた。


           次の日、彼の乗った飛行機を青空に見る。

           彼女の手には、昨日貰った彼の写真。

           何ともいえない、やりきれない気持ちになった。


           初めて命の大切さを知る。

           初めて戦争のむなしさを知る。

           青空を見上げながら



           気が付くと2時間も話し込んでいた。

           遅い昼食を食べに市場の辺りに行く。