拝啓 

あなたは ごきげんよろしいほで けっこです。

燃えろTAM2が スタジオライブやりますから  おいでんなさい。

6がつ29にち 6じ30っぷん スタジオにきてくなさい。

麦のおさけあります。お好きなのむの もてきてくなさい。

とびどぐもたないでくなさい。ピース。

                         燃えろTAM2一同




6月29日。

小雨。

午後7時10分。







重たいドラム・ソロ

ジャンジャンジャーン

グガグガグガグガグガ

ジャンジャンジャーン

グガグガグガグガグガ

ソリッドなギターにベースが絡みつく。

4つの楽器がひとつの大きな音の塊になる。


スタンド・マイクを掴む。


「おーいえー!」



俺の話を聞いて欲しい

生きることの話で・・・・

鼻から、ちょうちんぶら下げて

よだれベロベロ垂れ流し

口紅ベニベニ塗りつけて

いかれた、てめえのチンドンや







おーいえ!

ありがっとっ!


パチパチパチパチ!

よー!

パチパチパチパチパチパチ!

いえー!



えー今日は、燃えろTAM2のスタジオ・ライブに来てくれて、ありがとう!

ちょっと狭くて、音も良くないんだけど

ビールでも飲みながら、ゆっくり、楽しんで行ってください。

ビールは、そこのアイスボックスにたんまりあるんで、御自由に。



じゃあ、次の曲「GT400」




ドラム・スティックのカウント。

鋭いギターが疾走する。







I WANT THE MOTERCYCLE

あおっぽい夜明け近く

そいつに跨るんだ400の黒いやつさ

サボテンの毒針で、俺はラリるのさ

I WANT THE MOTERCYCLE

あおっぽい夜明け近く

そいつに跨るんだ400の黒いやつさ

銀行を襲うのさ 国境へ逃げるんだ




ギターが、ベースが、ドラムがタイトに駆け抜ける


「GT400」でしたっ!

パチパチパチパチパチパチ!



えー、このライブはですねえ、ホント急遽、行うことにしたんですけども。

その理由は、ギターのトシの転勤です。

トシの大阪転勤が急に決まりまして、まあ、送別会みたいなもんです。

そんな、こんなで・・・練習は全くしてません。

ぶっつけ本番です。


えー、で、このバンドは大学生の時、俺が3年の時に結成しました。

だから、もう、12、3年前?

卒業して、それぞれ、就職して、バラバラになって

それこそ、札幌、仙台、水戸、大阪、福岡とバラバラで

10年のブランクを経て、また、スタジオに入りました。

人前でやるのは12、3年振りです。

次の曲は10年以上前から、ずっと演ってる曲です。



「ねたのよい」







俺は朝から飲み過ぎて

底の底まで動けねえ

どうして、そこまで動けねえ

底の底まで動けねえ

どんと乗り出せ段の上

どんと乗り出せねたのよい

燃えて上がるは波の上

燃えて上がるはねたのよい



ギターが、ぶった切ったような細かいリフを繰り返す。

ベースとドラムが引き締まった低音をうねらす。

ギター・ソロが上り詰めると、あとは最期のワンコーラス。


おおおおおいえー!



パチパチパチパチ!

オッケー、ありがっと!

「ねたのよい」でしたっ!

ビール飲んでね。みんな。ビール。



えーと、じゃあ、ここでメンバー紹介をしたいと思います。

まず、ギター!金井正明! 

俺らバンドでは、ケネーと呼んでいます。

ケネーとは古い付き合いで、小学校の頃から一緒です。

その頃から、いつか一緒にバンドをやろうと話してました。

えー本人にも話してもらおうと思ってますが

無口な人が多いので、お題目というか、質問を用意しています。

えー、ちょっとカッコ良く、ロックとは?

お題目は、ロックとは?です。

じゃあ、ギター、金井正明!




 

えー、今日は酔っぱらっちゃってまして。

あの、いくらでもしゃべるんですけど。一時間でも。二時間でも。

大学の時、バンド・サークルで司会役でしたから。

えー、お題目。私にとってロックとは。

あの、あんまり最近、人生、ロックじゃなくなってきてまして。

どっちかというとボサノバとかハワイアンとか、そんな感じで。

それでもロックを感じる時がありまして。

あの、この歳になるといろいろあるんですよ。我慢することが。

でね、我慢している自分は決してロックじゃないなと。

でも、我慢している自分を客観的に見ている自分がいまして。

端から客観的に。その自分がロックかなと。ですね。

そんな感じですかね。



パチパチパチ!

ありがと。

何かカッコ良いこと言うねえ。


えーと、じゃあ、もう一人のギター!西塔トシ!トシ!トシ!

トシはですねえ。高校2年の時に同じクラスでした。

俺とケネとトシと3人で。

で、俺達、あまり、あの、お勉強が出来なかったんですね。

初めての試験が終わって、ケネがですね、俺に言ったんですよ。

あいつバカだぞって。物理とか10点とかで。

俺達だいたい同じくらいの点数で。

それで仲良くなったんですね。

ストーンズとかも同じように好きだったんですけど。

トシは俺達の中では、一番ロックにこだわってる奴で・・・

えー、じゃトシ・・・



 


いやー緊張するなあ。

いや、あの、まさにその通りで。

毎日ロック聞いてるんですよ。

だから、もう、生活の一部になってまして。

いや、もう、ずっとバカのままなんで。

このまま、ずっと60になってもロック聞いてると思います。

あ、えっ、69か。バカだね。

いや、実は、あと一週間で大阪に行くんですけど。

また、大阪でもメンバー探してバンドやってると思います。

一生ロックの西塔でした。


パチパチパチ!



 


いえー、ありがと。


じゃあ、次ぎ、ベースの田村!

えー田村は、バンド名、燃えろTAM2の由来でして。

田村のTAMTAM。

だいたい低音が好きな奴は、むっつりスケベが多くて。

実際、そうなんですけど・・・

それで、すかしてて。だから燃えろと。

えー今日、ここ狭いでしょう。だから呼ぶ人数どうしようかとか言ってて。

そしたら「いや、俺は、別に良いよ。呼ばなくて」とか言って。

誰も呼んでないの。今日。

きっと、差しさわりがあるんだね。誰を呼ぶかでね。

ひとりに絞れないというか。きっとね。なー。

えーまあ、燃えろTAM2の田村です。






すいません。

只今、ご紹介にあずかりました田村と言います。

あの、あの、呼ばなかったのはですねえ。

あの、あまり、こうバカな人たちと友達と思われるのがイヤだなあと。

いや、もう、ばれてるんですけどね。

えーあの僕にとってのロックというのは

何かこう偉大なる暇つぶしかなと。

人生には暇つぶしが大切なんですよ。

だからかけがえのないというか。

ロックがなかったら、つまらないというか。

僕からロックが無くなったら、何かつまんないだろうなと。

こう、感じている今日この頃です。



パチパチパチ!


 


田村、ありがとう。


えー、じゃあ、ドラムのサルちゃん。

猿橋修一。オン・ドラムス。

サルちゃんは、この中では、一番年下なんですけど。

えー、ケネと大学が一緒で

サークルの売れっ子のドラマーをケネが連れてきてくれて。

ホントいつもバンドを支えてくれてます。


サルちゃん!





あ、どうも、こんばんは、猿橋です。

えーとですね、私にとってロックというのは

やっぱ、この燃えろTAM2の4人とスタジオ入って

ドラム叩いてる時がロックかなって一番感じますね。

えっと、ちょっとトシちゃんが転勤ということで

なかなか機会が少なくなるかと思いますが・・・

ひとつ、そういうことで、よろしく・・・



パチパチパチ!
 

サルちゃん、ありがとう。


みんな何かカッコ良いなあ。

良いなあ。ずるいなあ。

俺もカッコつけよう。

えー、歌ってます。

金子です。

えーあの、ロックは思いっきりやることかなと思ってて。

そーすっと、生きてることを実感できるというか。

思いっきりドラムぶっ叩いて、思いっきりギターかき鳴らして

思いっきり息を吸い込んで、思いっきりでかい声を出すという。

そういう事かなと思っています。

命を燃やすというか。

今、音楽としてのロックって、普段ほとんど聞いてないんですけど

こいつらと一緒に音を出すのは、自分にとってすごく大切な事です。
 

じゃあ、次の曲を。

パフィーのプロデュースをしてる奥田民夫くんが

俺達の為に書き下ろしてくれた曲です。



「手紙」



ヘヴィなギターのイントロが始まる。

思いっきり息を吸い込む。



朝顔のような 百合のような 菫のような

あなたを見てると 胸が締め付けられるんです

淡い初恋の 忘れられぬ ときめきが

甘く 懐かしく 思い出されてくるんで

クラクラ君の 僕は手紙を書いてる 暇があれば








バンド全体の音が大きなうねりになって加速する。



おーいえー!

「手紙」でしたっ!

命が燃えてたでしょうか。



えーと、ここからはゲストを交えて何曲かやりたいと思います。

まず、最高のロックンロール・クイーン、EMMA!

えま!えま!いえー!



どうもー


えーEMMAとは割と最近の知り合いなんだけど、絵を描いててね。

プロのイラストレイターとして。

あ、今日、着ているTシャツもEMMAのオリジナルね。


売ってまーす!ネットでも。


そうそう、あの、今日のライブ見た人は50%OFFになるから。


えー、マジ。


えー、で、夏にはね。一緒に展示やりますんで。

アートアパートという。

俺は写真で、EMMAはイラストで。

今日、ビデオ廻してくれてる、がどちゃんが人形で。

こちらも、よろしくお願いします。



EMMA、何か言う?


いや、いや、何か良いですよね。こういうの。

あたしも大学の時バンドやってて。

あたしも司会やってたのね。大学のサークルで。

分かるよとか思って。

あ、いいっすよ。


オッケー、じゃ、EMMAと演ります!



「アイ・ラブ・ロックンロール!」


エッジの立った音がシンプルなリフレインを繰り返す


EMMAのハスキーなボーカルが絡む


I saw him dansin' there by the record machine

I knew he must have been about seventeen

It hit me so strong

Play my fovorite song

I love rock'n roll

So put another dime in the jukevox,baby

I love rock'n roll

So come and take you time and dance with me







EMMAはたたずまいがロックっぽくて最高にカッコいい。

I love rock'n roll

EMMAのボーカルを壊さないように繰り返す。

ラスト4小節、終わりの合図を出す。


同時にEMMAも合図を出していた。

ガーガーガッ!



パチパチパチパチ!

いえー!ありがっとっ!

アイ・ラブ・
EMMA

グレイト!グレイト!ありがと!

パチパチパチ!



次のゲスト!米澤!

米澤、来いよ。

えー米澤は俺の大学の後輩なんだけど

当時はフォークギターで弾き語りやってて。

今では2児のパパです。


2児の父です。

息子が2歳になったばかりです。


今日はもともとTAM2でやってる曲に
、ボーカルで入ってもらいます。

じゃ、さっそく演るか。



「どうしようかな」



ギターが古典的なロックンロールのイントロを弾き出す。

ベースが細かいリズムを刻んで追いかける。

初めのツーコーラスを歌う。



何か良いこと欲しい。

あーいつも退屈だらけ。

何か良いこと欲しい。

お茶でも飲んで帰ろうか。

それとも街をぶらつこうか。

何か良いこと欲しい。



歌え!米澤、歌え!

当初、予定に無かったサビを目配せして歌わせる。

どーどーどーどうしようかな!



ギター・ソロが終わり、米澤が歌う。

音の渦の中で、ハイになっている。

おぉいえー!おいえー!

完全に歌詞が飛んで、ただ、叫んでいる。

良い感じだ。


踊りまくる。

気持ちいい。

いえー!


パチパチパチパチ!

たむたむ、ありがとー!

米澤、ありがとー!


パチパチパチパチ!



えーと、じゃあ、もうひとりボーカルで、なかじ!

なかじ!

あの、司会の金井さん、紹介して。

司会の金井さん。



いえー、なかじでーす。

えっと、中島さんは、やっぱり大学のサークルで一緒でして。

駒沢大学の、非常に偏差値と人間性の高い大学なんですけども。

趣味は坊主。坊主。お経。

やっぱり一緒にやるのは10年振りくらいなんですけれども。

今日は力の限り雄叫びを。

ロバート・プラントに負けないように、ひとつ。


なかじ!なかじ!なかじ!


じゃ行こう!


「スモーキン・ビリー」







ヤニで固めた

タンクちぎれて

あふれ出したんだ

愛という憎悪

YEAH!
スモーキン・ビリー!


なかじが吠える。


さすがロック・バンドで歌ってただけあって

彼の声はシャウトしても芯がある。


なかじがツーコーラス歌う。

スネアがハイハットが、ぶっ叩かれる。

暴力的なギターソロが20小節続く。


なかじに変わって後半ツーコーラスを怒鳴りまくる。

最期のリフレインを、なかじと交互に叫ぶ。


いいええええー!スモーキン・ビーリー!


ブレイクも決まる。



パチパチパチパチ!

なかじ、ありがとう!

みんなも、ありがとう!


パチパチパチパチ!


握手を交わし、なかじが客席に戻る。



それでは、また、基本メンバーに戻って演ります。


あの、俺がですね。

あの、先日、会えなくなった人が出来まして。

いつか、また会えるんですけど。

今は、会えないんですけど。

いつも一緒にいる人で、その人のことを歌います。



「愛しさ」



ギターが乾いたアルペジオを繰り返す。

スローバラードを感情を抑えて歌う。


歩いては 歩いては

立ち止まり 話して

心に仕舞った宝は 愛しさ


歩いては 振り返り

背伸びして あくびして

心に仕舞った宝は 愛しさ








へヴィーでエモーショナルなギターソロが続く。


パチパチパチパチ!


「愛しさ」でした。




えーと次の曲はですね。トシが歌います!


いえー!トシーッ!

トシーッ!

トシ、ガンバレー!


えー、この曲は、TAM2では、今日、初めて演ります。

トシのオリジナルです。

カモン!トシ!



あの、5年前に博多にいた時に作った曲です。

えーと、そこにいる西さんと組んでいる

スリーピー・ランブラーズでも演ってます。



「善人のバラッド」






疲れ切った体 引きずりながら

探し求めてる 自分の居場所を

何処へ行っても 何をしてても

ただ時だけが流れ去って行く

Ah Baby 捕まえてくれよ

逃げも隠れもしない

Ah Baby この夜を一緒に過ごせば

分かり合えるかもしれないぜ



トシがぶっきらぼうに吐き捨てるように歌う。

良いなあ。トシのボーカル。

バンドのアンサンブルも決まってる。

今日、初めてやったのが信じられない。

やれば出来るじゃんかよ。


トシのボーカルが活きるようにサビをユニゾンで重ねる。

トシが気持ち良さそうにギターを弾きまくる。



サンキュー、サンキュー、サンキュー、サンキュー

パチパチパチパチパチパチ!

トシーッ!

いえー!


良いねえ、トシ。


えーと

みんなビール飲んでますか。飲んでね。

うん。疲れた?

疲れたね。大丈夫?

大丈夫かー。まだまだ。

じゃ、行くよ。



「パトリシア」




2、4拍目にアクセントを置いた重たいリズムが、ドラムから叩き出される。

その隙間をベースが細かく支え、グルーヴを作る。

ゆっくりと尖ったリフをギターが繰り返す。








マーマレードの空に

バニラの雨が降る

僕は紅茶の中

甘い紅茶の中

七色の虹をかけておくれ

僕、帰りたい

ねえ、パトリシア

太陽を捕まえておくれよ




「パトリシア」でしたっ!

パチパチパチパチパチパチ!

ありがっとっ!


えーと、次が最後の曲です。

チョット準備を。

ブラジルの太鼓、スルドを肩に掛ける。


オッケー。


「Sympathy For The Devil」


ドラムとスルドでベーシックなミディアム・グルーヴを作る。

田村が振るシェイカーがリズムにアクセントをつける。

ギターのカッティングが絡んでくる。

短いフレーズを重ねたギターが絡んでくる。

もっと音圧が欲しい。

田村にベースに変えるように合図する。







ベースが加わると
スタジオ全体がひとつのグルーヴになった

スルドを下ろし、マイクを握る。

音の塊に向かって、声を打楽器のように叩きつける。



Please allow me to introduce myself

I'm a man of wealth and taste

I've been around for a long, long year

Stole many a man's soul and faith

And I was 'round when Jesus Christ

Had his moment of doubt and pain

Made damn sure that Pilate

Washed his hands and sealed his fate

Pleased to meet you Hope you guess my name

But what's puzzling you Is the nature of my game







スリリングなギター・ソロ。

アグレッシヴなカッティング。

振り絞った声を、ギターのアタックにぶつける。

タイトなリズムが、どこまでもダイナミックに昇ってゆく。

5人が、ひとつの音になる。


いえー!

パチパチパチパチパチパチ!

パチパチパチパチパチパチ!



あっりっがっとー!

今日は、ホントありがとー!

サンキュー!



パチパチパチパチパチパチ!

パチパチパチパチ!
















みんな、お疲れさま!

また、演ろうぜ!








燃えろTAM2

ボーカル:金子 鉄朗

ギター:金井 正明

ギター:西塔 トシ

ベース:田村 吉宏

ドラムス:猿橋 修一


ゲスト・ミュージシャン:EMMA(ボーカル、ギター)
             :米澤 隆太(ボーカル)
             :なかじ(ボーカル)






 all photo by 米澤 隆太