BUI CONG KHANH 「雨の日、想う,2001」



始めから分かっていた。

見てはいけないことは。


ゆっくりと滞在した、世界遺産の街、ベトナムのホイアン。

落ち着いた街並みにギャラリーが点在していた。

観光客を相手に、複製のような作品を扱う店が、ほとんどだが

このギャラリーが違うことは、始めから分かっていた。


こんなギャラリーには、入ってはいけない。

何度か横目で見ながら通り過ぎる。

入ってはいけない。

分かってはいたのだが・・・

まあ、いいや。入るくらいは。


始めから分かっていた。

見てはいけない。

欲しくなる。

それでも見てしまう。


始めから分かっていた。

値段を聞いてはいけない。

きっと欲しくなる。

それでも聞いてしまう。


試しにディスカウントを提案する。

まあ、ここまでは下げてくれないだろう。

そしたら、諦めがつく。

やっぱりな。


でも、試しに、ちょっとだけ値段を上げてみようか。

これで「no」なら、完全に諦められる。

「yes」



始めから分かっていた。

まだ、まだ、旅は続く。

大きな絵を持って、旅をするのが、どれだけ大変なのかは・・・

始めから分かっていたのに・・・


でも、嬉しい!