水越 綾 「RED JUNGLE,1997」


目にした瞬間、ある種の衝撃をともなって、直面している現実を疑ってしまう。

または夢の中に、はまってしまったような。

そんなふうにして出会った絵がある。


お気に入りの六本木にある、タイ料理のレストランに行った。

おいしくたっぷり食べて飲んで、会計を済ませて店を出た。

その時なぜかこのまま帰ってはいけないような気がして、振り返って店の中を見た。

すると壁に掛かったある絵にすべての感覚が吸い寄せられた。

そこには、ずっと忘れることのできなかった大好きな絵があったのである。

アジアの赤いジャングルで赤い民族衣装を着た女の子が二人踊っている絵。


今までポストカードでしか見たことがなく、おおきささえ知らなかったものが

二メートル四方もの大きさと迫力で目の前に存在している。

近くにいた店員の女の子に思わず「この絵いつからあったんですか」と聞いていた。

その子は怪訝そうな、そして不思議そうな顔で

「どうしてそんなことを聞くんですか」と聞いてきた。


「金子さん、こんな絵好きでしょう。友達の友達が個展やるんだ」と

数年前にもらったポストカードのこと。

その友達の友達である美大生が開催した個展に結局いけなかったこと。

そして、ずっとこのポストカードの絵が忘れられなかったこと。

などを話した。


「この絵、私が描いたんです」





水越さんの絵には、こんなふうにして出会いました。

不思議な縁を感じています。


その後、水越さんは、沖縄に移り住んで、油絵に取り組みました。

現在は、東京に戻り、雑誌の仕事やレストランで働きながら、絵を描いています。


今回の展示が始まる直前、水越さんのバリ島での展示が決まりました。

ウブドゥのギャラリー「デワンガ」で8月いっぱい。

急遽決まった話で、水越さんは、自分の作品を8点持って、バリに飛びました。


凄く良い話なのですが、本人に展示を見てもらえないのだけが残念です。

どうしてまた、同じ日に・・・と思いますが、これも何かの縁なのでしょう。


展示する「RED JUNGLE,1997」はDMにも使いましたが、実物は100号の油絵です。

大迫力です。

是非、実物を見ていただきたく思います。