町を歩き、時々、写真に収める。

そんなふうに、少しずつ風景と自分をすり合わせてゆく。


ちいさな町に数日間滞在していると

顔見知りの人も増えてゆく。


いつも同じ場所で、提灯を作ってる、おばちゃん。

いつも同じ場所で、太鼓を叩いてる、男の子。

いつも同じ場所で、魚を釣ってる、おじちゃん。


「ほらほらハローって言ってみな」

おばちゃんが抱いている小さな子供を促す。

恥ずかしそうな「ハロー」に笑顔で返す。


みやげ物屋の前を通る。

何度も強引に声を掛けてきた、おばちゃんも

今では、笑顔で軽く手を振ってくれる。


「また来たね」の笑顔に迎えられて、いつもの席に座る。

チャンフー通りと市場が見下ろせる窓際の席だ。

勝手にスイッチを入れて扇風機を回す。

運ばれてきた冷えたビールが喉を通る。


いつの間にか、町も人も、やわらかな表情を見せてくれていた。