夜が明けるには、まだ、時間がある。

                  空気は冷たく澄んでいる。

                  ポツンと開いている店で、暖かいコーヒーを買う。

                  遙か南に向かって車を走らせる。

                  赤信号寸前の交差点を、右折する。

                  気持ちが昂揚していて、ついついスピードが上がる。

                  時間は、たっぷりあるのに、ついついアクセルを踏む。

                  曲がる予定の道を通り過ぎてしまい、次を左折する。

                  地面が剥き出しの、急な坂道だ。

                  ギアをローに入れ、ゆっくりと進む。

                  でこぼこ道に、車体が、おおきく揺れる。


                  しばらく進むと、道の真ん中に花壇があった。

                  車を止めて、降りて見る。

                  花壇は、石や小枝で何重にも四角く囲まれ

                  素朴で美しい装飾が施されている。

                  花壇の真ん中に、ちいさなスペースがあり

                  日々草が芽を出している。


                  この花壇は、しばらく会っていない幼なじみが作ったみたいだ。

                  ちいさな札が立っているのに気づく。

                  立て札を読む。



               私は長い間、自分に籠もって、何もしないで過ごしてきました。

                  この花壇を作ったのは、私の初めての自発的な行動です。

                  ここから私はスタートします。

                  どうか見守っていて下さい。