美しい女性と、真っ直ぐな長い道を、歩いている。
二人とも両手に、今晩のおかずを下げて、歩いている。
高原の野菜を栽培している畑や、放し飼いの馬が見える。
涼やかな小川のせせらぎを越える。
おばあが、後ろから自転車で、やってくる。
でこぼこ道で、タイヤには空気が無く、走りにくそうだ。
やはり、かごの中に、今晩のおかずをたくさん入れている。
おばあは、自転車を止めると、荷物を、大きな木の切り株に置きだした。
此処に置くと、誰かが、家まで届けてくれると思い込んでるらしい。
「ここに置いてもダメだよ」
おばあは一度思い込むと、他人の言葉に耳を貸さない。
「しょうがないなあ」
おばあが置いていった荷物を両手に抱える。
視界が見えなくなるほどの荷物を抱えて歩き出す。
「大丈夫?」
美しい女性が声をかけてくれる。
「平気、平気」
女性は、励ます気持ちから、歌を歌ってくれた。
習い始めた、たどたどしいポルトガル語で、歌う。
すごく、可愛い。
quando chega o verao eu me sento na varanda,
pego o violao e comeco a tocar
minha morena que esta sempre bem disposa
enta-se ao meu lado tambem cantar
quando chega a trade um bando.....
(夏になると 僕はベランダに座り ヴィオラォンを弾くんだ
いつも上機嫌な褐色の恋人が 側に来て歌い出す
午後にはツバメの一群が飛んで 夏の到来を教えてくれる
密林に入ればサビアーが美しいメロディで心を和ませてくれる
夕方六時 チャペルの鐘がアヴェ・マリアを奏でる
すると月が山の向こうから昇り 一日の終わりを告げるんだ)
歌ってくれる姿が可愛くて、愛おしさを覚える。
この荷物を抱えている腕で、抱きしめたいと思っている。