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海に浮かび砂浜を見ている。
浜にはちいさな黒人の男の子が一人たたずんでいる。
その子を海の中に誘うが怖がって動かない。
表情からは入ってみたい気持ちも、うかがえる。
「大丈夫だから」
浜に上がり何度も誘ってみるが、やはり動こうとしない。
嫌がる男の子を抱きかかえて、海に放り込んでしまう。
海の中で水しぶきをあげ、泣き叫ぶ。
やがて足が立つ事に気づき泣きやみ浜に戻ってくる。
泣きべそをかいている男の子の頭を黙って撫でる。
砂浜に長い線をまっすぐに引き、その上に等間隔で丸印を書いてゆく。
「これを見てごらん」
いちばん手前の印を示す。
「たった今の経験は、このひとつ目の丸印なんだ。
人生はここに書いてある丸印のように、少しずつ経験を続けてゆく事なんだよ」
男の子は黙っている。
「今度はふたつ目の経験をしてみよう」
砂浜に這うようにツルが伸びサツマイモの葉が茂っている。
以前埋めておいたサツマイモが、そろそろ収穫の時期なのだ。
「ここを掘ってごらん」
男の子は堀り始める。
やがて大きく育ったサツマイモがたくさん出てくる。
一緒にジャガイモも出てくる。
たくさんのイモを掘って、うれしそうにしている彼の笑顔が眩しい。 |