暗闇の中にいる。

雑然と荷物が積み上げられた荷台の上に乗っている。
荷台の上で手綱を取り、2頭のロバを操っている。
闇が深いため、ロバの背中だけしか見えない。
どんな場所にいるのか全く分からない。
道は長く、でこぼこと曲がりくねっているようだ。
ロバは綱ごしの指示に忠実に反応して前に進む。

闇の中を、しばらく進むとスタジオに着いた。

小さなスタジオの重いドアを開ける。
久しぶりのメンバーが待ってる。
ひとりひとりと握手。
立てかけてあったギターを肩に掛ける。
それを合図にドラマーがアフリカン・パーカッションを叩き始める。
ゆっくりとした変拍子だ。
「遠い昔に引き裂けた、おまえの心のスクリーン・・・」
ハミングバードのアコースティックをカッティングしながら、ひとり歌う。
ワンコーラス終わるとバンドの演奏が続く。
もの凄い音圧のグルーヴがスタジオを揺るがす。
ブランクを感じさせない、気持ちの入った演奏だ。
一緒に過ごした全ての時間が凝縮された演奏だ。
「さびた扉を蹴破って、もう一度こちらに出てこいよ・・・」
一曲だけの演奏が終わった。
最後の演奏が終わった。

メンバーひとりひとりの目を見る。
言葉にしない別れを交わす。

ひとりスタジオを出て、寒い国へ向かうバスに乗る。