近所の喫茶店に出かける。

            お客のほとんどはモーニングのトーストを食べている。

            いつものようにメニューにない肉じゃがを作ってもらう。

            まず、ご飯とみそ汁と漬け物が出てくる。

            「ほんと、あっという間に大きくなるわよね」

            ちいさい頃からの自分を知っている店のおばさんが、肉じゃがを作りながら話す。

            「あら、おはよう」

            昔から近所に住んでいる、おばあさんが店に入ってくる。

            おばあさんは入り口の辺りに立ち

            「季節が巡ると小鳥は巣を飛び立つ」というような意味の歌を詠む。

            おばあさんは自分の前に座り、よそられたばかりの、肉じゃがを食べる。

            お茶を煎れながら、店のおばさんが語る。

            「おばあさんには、ほんと、可愛がってもらったのよ。

            ちいさなあなたの事が可愛くて、可愛くてねえ。

            あなたを見て微笑んでいる人がいると、うれしそうに近づいて行って

            あなたを抱かせてあげたり、普段から持ち歩いている、あなたの写真を見せたりしてねえ」