兼古昌明

                                                      


                        初めての発表会


今回は、初めての発表会について書きたいと思います。

私の初めての発表会は、今から8年前の平成7年7月16日(日)に遡ります。

「ギターとの出会いの記」でも触れましたが、

クラシックギターはほとんどミーハー程度だったので、

人前で演奏するなどということは考えたこともありませんでした。

曲は先生から与えられた、
M.モノーの「愛の賛歌」でした。

愛の賛歌といえば越路吹雪の歌は知っていたので、多少なじみがありましたが、

いざ練習しようとすると楽譜にはシャープやフラットの記号があちこちにあり、

どう指を抑えてよいか面食らいました。

大体、楽譜などというものは中学校以来殆ど縁も無く、

ましてやギターの弦とフレットがどの位置になるかなど、

タブ譜でもなければ知りようもありませんでした。

教室に入ったのはその年の3月でしたので、

よくもまあ発表会に出ようと思ったものです。

しかし出ることになった以上は腹を決めて練習しました。

ともかく暗譜をしてからは一度も間違えずに弾き通せるよう何度も何度も練習しました。

しかし、もうちょっとというところでつかえてしまうので、

ギターを壊したくなる衝動が出てきました。

当時、子供達は小学5年と3年で、

「まさかお父さんがギターを習いにいくとは?」と思っていたようです。

女房はもっとクールに感じていたかもしれません。

それでも初めてのことでもあり、お父さんが頑張るならということで、

結構応援してくれました。

ちなみに譜面台もなく足台もなくベッドに腰掛けたり、

畳に座り込んだりしての練習でした。

当時、先生は初心者に対してはあまり細かいことは言わない方針だったのでしょう。

そんな頃、いつものようにレッスンに行くと先生からもう一曲楽譜を渡されました。

それは3重奏の楽譜でした。

クラシックギターに重奏などというものがあるのはこの時初めて知りました。

曲は夏にふさわしく
G.ガーシュインの「サマータイム」でした。

この曲もとてもなじみのあるもので、必死に練習しました。

いっしょに弾いたのは、井上英二さんと茂木律さんでした。

当日まで一度もあわせずぶっつけ本番でしたが、あっという間に終わってしまいました。

井上さんとは世代も同じで仕事もコンピュータ分野ということで、

その後も何度もご一緒させてもらい、ほろ苦くも楽しい思い出を作らせてもらいました。

さて独奏のほうですが、

いざ会場(用賀のスタジオキャロル)に行ってみると部屋は小さいものの、

大きな花輪はあるわ、ちょっとしたステージはあるわ、

おまけに客席からは大きなカメラが向けられ照明器具まで置いてあるわで、

「俺、本当にあんなところで弾くのか????」という恐ろしい感情が湧いてきました。

会場では練習場所が無いためギターを抱えた生徒たちが所狭しと弾いており、

それぞれのメロディーもわからないほどで一種異様な光景でした。

私はいたたまれず会場を抜け出してある店を探しました。「気付薬」を探しに行ったのです。

これは効果テキメンでした。あとで写真を見ると赤ら顔で弾いているのがよく判ります。

緊張はしたものの立ち往生も無く何とか弾きとおすことができました。

この時は家族3人がそろって応援に来てくれ、花束も用意してくれていました。

長男はそれまで殆ど寝ていましたが、はっと目をさましたようです。

後日、そのときの模様を作文にまとめてくれています。

ともかく私の発表初体験はこのようにして終わったのです。









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