獣医エッセイ
(水族館にて)
>第一話<
〜ペンギンのくしゃみ〜
「私もいろいろな生徒さんを相手にしてきたが、
あなたのような仕事を持つ人は初めてだ。」
との先生のお言葉でページの末席を汚すことになりました。
動物を相手にした仕事のこと、
動物のそのもののことについて、
一筆なり書いていきたいと思います。
ペンギンは”くしゃみ“をします。
風邪をひいたわけでもないのに・・・・。
特に餌を食べた後にクシュン、プシュンという音とともに、
首をすばやく左右に振ります。
「あ、くしゃみした!」と言う声もちらほら。
でも、正確には”くしゃみ“ではないのです。
これが何かというと体内の余分な塩分を排泄する作業。
ペンギンは海に潜って魚や甲殻類を捕らえて食べる鳥類です。
餌と一緒に海水も飲み込んでしまいます。
塩分濃度は体内より海水の方がはるかに高いので、
腎臓で処理し切れない塩分を塩類腺が処理します。
塩類腺は、目とくちばしの間にあります。
水族館でよく見かける、
フンボルトペンギンやケープペンギンですと、
この場所は皮膚が露出していてピンク色をしています。
体内の余分な塩分は塩類腺で濃縮されて鼻の穴の方へ流れていきます。
鼻がムズムズするとペンギンたちはたまらず”くしゃみ“をするのです。
水族館や動物園でペンギンの目線の位置で、
壁やガラスが塩を吹いたように白くなっていたらそれは、
ペンギンの”くしゃみ“のせいです。
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