獣医エッセイ
(水族館にて)
>otterの話<
私のメールアドレスにはotterという語が含まれています。
今回は思い入れの深い動物の話です。
otter(オッター)とはカワウソという意味の英語です。
私が初めて生きたカワウソに出会ったのは、以前の職場です。
そこにユーラシアカワウソという種類のカワウソがいました。
小さな細目の頭、
根元から先端にかけてスムースに細くなる尾、
指の間にはみずかき。
実にカワウソらしいカワウソです。
眼はくりっと丸く愛嬌のある顔をしています。
毛はとても密度が濃くて、
水から上がったばかりの水滴が、
ころころと体表を転げ落ちる様子には美しさを感じます。
性格はというと、起きている時は落ち着きなく動き回り、
いたずらするものをいつも探しているような感じです。
いたずらをしても本人には全然悪気はなく、
こちらが怒ろうにもあの人なつこい顔を見てしまうと、
まあ、しょうがないか、と許してしまう。
こんな子どものような面もありながら、
餌の魚を食べる時はさすがに肉食獣、野生動物です。
両方の前足でがっちりつかんで、頭からかぶりつき、
血を滴らせながら骨まで全部食べてしまいます。
あの歯にだけは噛まれたくない、と思ったものです。
美しさと猛々しさをあわせ持つ。
野生動物とはそういうものかもしれませんが、
写真や映像でなく実物の動物として、
初めてそれに気づかせてくれたのが、
カワウソだったような気がします。