渡辺さんの俳句傑作選






2012年 4月の俳句





囀やギター爪弾く昼下がり
                春もたけなわとなってくると、
                       まず小鳥の声がにぎやかになってくる。
                      小鳥といってもいろいろあるわけだが、
                        ヒヨドリなどは春だから囀るわけでもない、
                 冬の間もかなりうるさい・・・。
                             どういうわけか夏になると街中から少し姿を消す。
                  全部いなくなるわけじゃないが、
                 少し鳴き声の勢いが薄れる。
                                 桜が咲いてる頃は花の蜜を吸うおうと元気いっぱいだ。
                        盛んにさえずっているというか叫んでる。
                            あまり可愛いとは言えない囀りの筆頭かも・・・。
                        ギターを爪弾いてという雰囲気じゃない。
                     シジュウカラ、メジロくらいになると、
                            声が高くなる分なんか可愛らしいさが出てくる。
                           ギターを爪弾きたくなる囀りはこちらだな・・・。
                      甲高くコロコロした感じのさえずりが、
                      爪弾くギターの音にコラボする感じだ。
                         カラスになると当然囀る感じじゃなくなる。
                       まあ、三橋美智也が異様に合ってくる。
              ギターを爪弾くとなれば、
                            できるだけかわいいと思えるさえずりがいい・・・。








老い父の戦争話鳥雲に     
                  冬団塊世代の父親というのは、
               総じて戦争の体験がある。
                             当然子どもとしては戦争などの経験はしたくない。
                経験したことがないだけに、
                           話は面白くというか興味深く聞くことはできる。
                            これがまた老いるほどに同じ話が多くなってくる。
                     この間も聞いたというあの状況・・・。
                     親がその歳になってくるということは、
                            子供の方も忍耐強くなって人間もできてくるから、
                             とりあえず分かっていても何度でも聞き耳を立てる。
                                そしてそこで戦争は悲惨だという思いを強くするとともに、
                   その時代に生まれなくてよかったと、
                  内心胸を思いっきりなでおろす。
                     それが貴重な体験だったと思える頃は、
                  自分の子供も大人になっている。
                        しかし、まだ練れてくる年頃でもないので、
                 父親の話など聞くわけもないし、
                           まあ、それほどインパクトのある話でもないから、
                               いつまでたっても聞く耳は持ってもらえそうにない・・・。









鎌倉に宮家の館鳥帰る
                    鎌倉に宮家の住まいがあるのかと、
          ちょっと驚いたが、
                  まあ、どこかにあるんだろう・・・。
                      宮家の現在過去の館がどこにあっても、
                            特に現代では問題も大きな関心も呼ばない・・・。
                             しかし、鎌倉といえば武士の本格政権が興った地。
                  天皇を頂点とする貴族国家から、
                     天皇、貴族の使い走りだった武士が、
                       初めて国家の頂点に立った武士の地だ。
                           その前に平家の政権があったという話もあるが、
          京都の地を離れて、
                      まったく貴族社会から分離した政権は、
             鎌倉が初めてだろう・・・。
                      そういう地に宮家の館が存在するのも、
                これも時代だという気がする。
            時代の流れというのは、
                その時代に気になったことも、
                           いつの間にかどうでもいいことにしてしまう・・・。
         実に便利なものだ。
                   かの時代弓矢で狙われていた鳥も、
                        今の時代じゃ気にする鳥もいないだろう・・・。








晩学の筆遅々として春の土
                ある程度歳を重ねてある日、
                     そうだカルチャーをなにかひとつ・・・。
                                ということで始まることの多いリタイヤしてからの学問。
                      それはそれでなかなか意欲的であるし、
                       脳および体の活性化には非常に良い。
                   意欲的であるという精神状態は、
                            人間の根本の活力を引き出す力があると思う。
                            人間生命力の源になるエネルギーというものは、
                         外からの刺激を受けて動き出すものだから、
              なんの刺激も与えないと、
                       どんどんエネルギーは失われていく・・・。
                  蓄えておくことのできないのが、
            人間のエネルギーだ。
                         学ぶ意欲はそこそこ評価対象となるのだが、
                   そこから先がなかなかなのだ・・・。
                           本を読んでもメモしてもこれまた頭に残らない。
                          ほとんどエネルギーと一緒で蓄えられない・・・。
                      しかし、そこを覚悟の上で始めるのが、
               晩学というものだろう・・・。
                     結構つらい決断になりがちなものだ。








鎌倉に七切り通しわらび餅
              鎌倉の切り通しといえば、
               鎌倉幕府を思い浮かべる。
                 これは間違いではなさそうだ。
               鎌倉幕府の号令があれば、
                              天下の御家人が鎌倉に集まってくるときに通る道だ。
                      まあ、当時の軍用道路といえるだろう。
                               こういう道路というのは幕府に力のある時はいいが、
                落ち目になって攻められると、
                            攻め手にとってはまことに都合の良い道になる。
             鎌倉幕府路滅亡させた、
                         新田義貞が攻め上ったのもこの切り通しだ。
                 自分に都合よく作った道筋も、
                           落ち目になるとだいたい都合悪くなるのが常だ。
                        鎌倉にはこの切り通しが七つもあるという。
               鎌倉幕府最盛期のころは、
              権威の象徴だったはずだ。
                  都合よく使用に耐えたこの道も、
                 落ち目の時は一気に都合悪く、
              敵のいい通り道になった。
                 権威の象徴などが辿る道筋は、
                          いつの時代もそう変わらないということか・・・。
                   鶴岡八幡宮の参道にある茶店で、
                     わらび餅など軽く喉に詰まらせながら、
                     往時をしのぶのもいい季節だろう・・・。
                      詰まらせて昇天はまずいとは思うが・・・。






主催者吟


読みふける幼き文や古日記

つつじ咲く傘もささずに濡れながら

途切れたる会話引き寄せ花の雨

トレモロの雨の歩道やつつじ咲く

雨止みて寒の戻りや縄のれん




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