渡辺さんの俳句傑作選
2012年 6月の俳句
諍いのさなかに届く枇杷の色
諍いといえば、
とにかく小さいものから大きいものまで、
無数にネタはある。
一番身近では夫婦間の諍い。
これはもう諍いの筆頭横綱だろう。
後はご近所に会社と広げていくと、
ほとんど人間の一生というのは、
諍いの中で始まって、
諍いの中で終わるという感じではないだろうか・・・。
諍いの中にホッとできるものが、
存在するというのも人間界の特徴だ。
諍いホッ・・・、諍いホッ・・・。これを繰り返して、
人間一巻の終わりを迎えるのではなかろうか・・・。
この句に出てくる枇杷。
このちょっと薄いオレンジ色のラグビーボールのような、
この形が癒しの雰囲気を持っているというわけだ。
ツルッとした曲線の面と、
淡いオレンジ色に、
トゲだった雰囲気を鎮めそうなパワーがありそうだ。
最近のデカい諍いといえば民主党分裂。
輿石さんが枇杷の役目を担って調整したが、
あの方もテレビの映像で見ると、
まだ完全にツルッとしてない・・・。
余分が少し残ってる
やはりというか不調に終わりましたな・・・。
万緑や少年誇る二頭筋
緑の葉で山が覆われるころ、
人間の体も元気になるこの時期。
外に出て体を鍛えるにもいい時期だ。
真夏のような暑さもなく寒さもない、
運動をするには一番いい時期だろう・・・。
一番多いのはジョギングかな。
ジョギングもこちらは顎が上がりながら走って、
若い連中は足取りが軽い。
一回抜かれるともう追いつけない。
あっという間に視界から消えてしまう・・・。
軽い屈辱とあまり軽くない歳を感じさせる・・・。
やはりぐっと突き出た二頭筋を前面に出して、
わざと見えるようにしてみたいものだ。
おぉ〜〜というどよめきを起こしてみたい・・・。
歳とともに、
おぉ〜〜のどよめきが、
気持ちだけの大きさになった二頭筋に対する、
同情の溜息となってしまうのがいまひとつだ。
普通の人が筋肉を誇れる年代って、
少年から青年と呼ばれる期間だけだな・・・。
冗談が滑ってしまう心太
梅雨明けもぐっと近くなり、
猛暑到来に身構える。
どこを向いて身構えるのかよく分からないが、
とにかく気持ちでグッと身構えている。
猛暑到来でいきなりおいしくなるのが、
なんといっても冷奴と心太。
素麺も入りそうだが、
素麺はどちらかというと主役級だ。
やはり心太と冷奴は猛暑の夏の脇を固める、
重要なアイテムといえる。
これが主役になるようじゃ病院暮らしも遠くない・・・。
脇役といっても冷奴と心太だとかなり性格は異なる。
絹ごし豆腐の冷奴だと若干繊細な神経が必要になる。
意外と無口になって食べる・・・。
木綿豆腐の冷奴だと、
もう少しガサツに箸をドライブしながら、
若干口数が多くなって普通だろう・・・。
かたや猛暑のわき役の大関クラス心太。
これはもう束で捕まえて強引に口に持ってくる。
このあたりで会話も言葉がまず荒くなる。
冷奴と違ってまず冗談から入っていく。
束でグイグイいくから冗談が途中で途切れても、
まず気にしない・・・。
この猛暑の脇役の西と東の大関の性格を語りながら、
夏を乗り切りたいものだ・・・。
青嵐ぬけてピカソの美術館
梅雨の真っただ中に、
台風4号が今年は猛威を振るった。
梅雨時にこれだけの大型の台風が、
日本列島を縦断したのは、
あまり例がないようだ・・・。
とにかく雨がよく降った。
島国日本の地面じゃ対応できないくらいに降った。
この時期とは思えない水の多さに唖然とする。
台風といえば秋のというイメージで形作られた、
感性の崩壊を招いたといっていい・・・。
伊勢湾台風、第二室戸台風、洞爺丸沈没・・・。
みんな秋の台風の出来事だった。
これからの子供たちは、
台風は梅雨と秋に来るもの、
というイメージになるのだろう。
この雨の被害の状況の暗さは、
ピカソの絵でいえば、
青の時代とぴったり重なりそうだ。
あのわけのわからない色彩の絵を描いた、
ピカソの青の時代。
いまの日本の天災の時代に、
これほどマッチしたピカソの青の時代。
美術館に見に行こう・・・。
梅雨寒し詰め替えてみる薬箱
今年の梅雨は低温状態が結構長く続いたと思う。
一晩で10度下がったり上がったりが普通だった。
下がれば喉にきて風邪をひく。
上がれば体がいきなり重くなる。
頭も重くなって動きは鈍くなる一方。
なんか具合悪いの右左を行ったり、来たりしてる状態が、
今年の梅雨の有様だった。
こういう時というのは、
どこがどう具合悪いかの焦点が絞りきれない。
気温が下がって風邪で、
気温が上がって偏頭痛・・・。
下手をすると、
その両方の折衷型の具合の悪さが、
前触れもなく出現したりする。
こういう時というのは、
風邪薬だけ飲んでるようじゃダメで、
いろいろな薬をその症状ごとに、
飲み見分けないといけない。
そんなことを考えてるだけで、
余分な頭脳労働を強いられる。
寒々とした梅雨、ムシムシとした梅雨。
この状態で薬箱の景色も変わろうというもの・・・。
主催者吟
梅雨晴れてしずくの中に白き街
見えていて着かぬ頂雲の峰
珈琲の苦みの深き梅雨のカフェ
水割りの氷の音や明ける梅雨
髭長き虫の葉裏に雨宿り
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