渡辺さんの俳句傑作選
2013年 7月の俳句
ベルリンの壁の断片鴎外忌
ベルリンの壁が崩壊して幾星霜。
当時壁が破壊された直後は、
お土産用に壁のかけらが売り出されていた。
なんとそのかけらを御土産にもらった・・・。
ベルリンの壁と言われると、
そうかなという感じだった。
そうでもなければ、
ただの岩のかけらって感じだった。
それでもやはりドイツを東西に分けていた壁という、
とてつもない歴史の遺産のかけらを持つということは、
それだけでも結構貴重なことではある。
ここからはイマジネーションの勝負だ。
歴史について通か否か・・・。
ここからはめざしの頭も信心から、
ということになるのかもしれないだろう。
ベルリンと言えば東西が分かれる前の首都。
分裂してからは東ドイツの首都だった。
このドイツには日本からも明治の昔から、
留学する人が多かった。
滝廉太郎なんかもそうだった。
森鴎外もドイツ留学組だ。
鴎外にはこのドイツ生活のことを題材にした小説もあった。
けっこう名作だったと思う。
上野駅模様替えして桜桃忌
上野駅と言えば東北の玄関口。
以前は東北からの列車の終点だった。
今は新幹線が通ってしまって、
東京駅に集約されてしまった。
これ自体もなんか東北というイメージを、
どことなく喪失させることだと思う。
上野駅という駅名から、
東北の匂いを感じることはなくなってしまった。
こういう一事をもってしても、
日本という国はつまらん国だなと思う。
風情という感性の乏しさの象徴じゃないかと思う。
集団就職という言葉も、
今はかなり風化してしまった感があるが、
上野駅の持ってる歴史の大きな一ページじゃないかと思う。
東京駅につながったことで、
上野駅単独の歴史はなくなってしまった。
ホームに流れる音楽が、
「ああ上野駅」に変わったそうだ。
東京駅から乗ったり下りたりがほとんどだから、
なんだか分からない人がほとんどじゃないかな・・・。
石川啄木も太宰治も上野駅に降り立ったんだろうな。
東北訛りが満ちていた時代だったんだろう。
「ああ上野駅」は知らなかっただろうけど・・・。
愚痴言わぬ男の矜持ところてん
猛暑!!
気象台が観測を始めて初めての高温。
尋常ではない子の暑さは、
いったい地球という惑星のものなのか・・・。
実はすでに地球という惑星は存在してなくて、
別の星の上に人類はいるんじゃないか・・・。
人類がボサッとしてるうちに地球外生物によって、
すでに地球は別の星にかえられているのかもしれない。
北朝鮮、イランの核なんて言ってるうちに、
地球外生物は高笑いなのかもしれない。
化学、文明は人類が一番発達してると思っていると、
とんでもない錯覚なんじゃないか・・・。
甲府ではついに40度を超える気温。
ブドウの産地として有名な山梨県。
そのブドウにも被害が出てきてるようだ。
この異常な高温が今後もつづいて行くと、
全国の農産物の産地が、
変わっていくのではないだろうか・・・。
あと10年の間に山梨県が、
ミカンの一大産地に変貌してる可能性がある。
和歌山はパイナップルが名産になってるとか・・・。
これだけ愚痴ってしまうと、
男の矜持と問われて返す言葉はなさそう・・・。
どんなに暑くてもゆだっても、
男は黙ってサッポロビールなのだ!
ここではところてんになってるけど・・・。
噴水やB級グルメの人盛り
B級グルメという言葉が流行りだしたのは、
全国のB級と言われる御当地料理のコンテストが、
始まってからではないだろうか・・・。
それほど昔からあった言葉でもないと思う。
料理と言えば一流シェフの料理が話題になるのが普通で、
一般の街の料理が話題になるということはなかったと思う。
いまでも高級料理という言葉は存在してはいるが、
B級グルメという言葉が背丈を並べたと思う。
全国大会で優勝すれば大変な人出がある。
高級料理という反対の意味があるんだと思う。
庶民の料理というか・・・。
高級というと一生のうちでも、
そう何回も食べられるわけでもない。
そういうA級グルメに対する気概を持ってということだろう。
ただこういう大会で優勝したとして、
優勝した時の人だかりがどこまで続くのだろうか・・・。
その後をあまり聞いたことはないが、
パッと吹き上がった噴水が、
だんだんしょぼくなっていくようなことはないのだろうか・・・。
どっと人が押し寄せて、
サーッとひいていくアイドルのような雰囲気が、
B級らしいのかな・・・。
ハンモック南アルプス揺らしけり
ハンモックというとなかなか懐かしい気もする。
今はなかなか実物に目にかかることはない。
ハンモックと聞くと、
別荘での優雅な時間に結びついてしまうのは、
今や中流以下になってきたわが身の妄想か・・・。
なんとなくいじましいって気がしないでもない・・・。
そもそもハンモックというのは、
帝国海軍の艦内での就寝用に使われていた、
というのがそのルーツのようだ。
狭い艦内で大人数が寝泊まりするには、
ベッドなんて並べてはいられない。
吊ったハンモックを並べて、
出来るだけ多くを収容する。
余分なしの人ひとり分で済むから、
かなり効率が良かったということだろう。
ただ実際に使った人の話を聞くと、
背中が伸びないからな、
かなか疲れが取れないということだ。
しかし、戸外の別荘かなんかの庭・・・。
風に揺られるハンモックで揺られていれば、
自分が揺れてるということではなく、
大山脈の南アルプスが、
自分に向かって揺れてるような、
気宇壮大な気分に浸れるのではないかと思う。
同じハンモックの気分も場所によるということだ。
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