渡辺さんの俳句傑作選






2013年 9月の俳句





携帯の闇に吸われる残暑かな
                         いまや携帯がニュースに登場しない日は、
                     数えるくらいしかないという状況だ。

                      「携帯しても連絡がつかなかった・・・」
                         「携帯が少し離れたところに落ちていた・・・」
                                 とにかく犯罪のニュースに携帯は主役のように出てくる。
                    「携帯の発着信が決め手になった」
       などなど・・・。
                                 今は携帯と言っても普通の携帯とスマフォが混在してる。
                       ほとんどスマフォになったと言われてるが、
                           ニュースにうなれば携帯とひとくくりで出てくる。
                      それほど生活に密着度の高い携帯・・・。
                      昭和も後半までは犯罪のニュースでも、
             公衆電話がよく出てきた。
                その昔の子供誘拐事件など、
                         公衆電話からの声がニュースで流れたりした。
                       歌謡曲の歌詞にも公衆電話が登場した。
                 昭和育ちだと公衆電話というと、
                   気持ちの琴線に触れるものがある。
                           ある意味分かりやすかったというのだろうか・・・。
                     この風景が携帯に変わったところから、
                                  なんとなく顔が見えなくなったということがあるかもしれない。
                            メールなどという手段が出てきたためかもしれない。
            相手の息遣いが消えて、
                       まったく謎のやり取りになってしまった・・・。
                 命というものが希薄になるのは、
                   当然という気がしないでもない・・・。









   連勝の記録見守る秋扇     
          23連勝1s・・・。
               楽天のエース田中将弘だ。
                        今季一度も負けないでここまで来ている。
                    プロ野球で一シーズン負けなしで、
                        投げ続けることができるものだろうか・・・。
                            
その昔の西鉄の鉄腕稲尾が20連勝を記録して、
                          これはもう破られないだろうといわれてきた。
                          しかもボールも飛ぶボールにかえられていた。
                       それによってコミッショナーの首が飛んだ。
                           この飛ぶボールの恩恵かどうかは分からないが、
                           バレンチンのホームランも60本の記録に達した。
              投手不利と言われている。
                  それでも23連勝する投手がいる。
                               まあ、打撃によって助けられている部分もあると思うが、
                             それにしても一回も負けなしというのは奇跡に近い。
                     投手と野手で記録が出たことになる。
            今年は記録が多い・・。
         東京五輪が来て、
            消費税が上がった・・・。
             特に後半に来た感じだ。
                    田中の記録がどこまでいくのか・・・。
                      シーズン終了までに25連勝してほしい。
                            国民のかなりの人たちが注目してる事柄だと思う。








大花野男の矜持落ちていた
                            現代の男というと草食系と言われることが多い。
                   草食と言えばなにやらおとなしく、
                  迫力に欠けるということか・・・。
           そんな話をよく聞く。
                           肉食系のいつも頭に血を登らせてるのよりは、
            穏やかでいいのだが、
               迫力に欠けるというのは、
                  あまりいいことでもなさそうだ。
                               日本企業の衰退をここと結びつける評論家もいるが、
                           それはちょっとと言ってもそうかもしれない・・・。
                          いろんなことをいろいろな世代が言っていて、
                   聞き役になる若者は結構大変だ。
              自分の持っている個性を、
                    強力に主張するという風潮はない。
                       日本全体が大人しくなってるのも確かだ。
                            自己主張を許さない風潮が出来上がってるのか、
                            する術を持たない男子女子が増えているのか
・・・。
                    なんとなく明確さのない世の中では、
                             自分というものを前面に押し出していくというのは、
              難しいのかもしれない・・・。
         今の世の中には、
            男の矜持というものが、
            あちこちに落ちていて、
                     それが当たり前になってしまってる・・・。
                 拾い上げる人もいなくなってる。
               そういう世の中というのを、
                    なんだか見てる気がしないでもない。









日時計の周りを囲む金魚草
                               日時計というのを子供頃の工作で作ったことがある。
                  太陽が回っていくにしたがって、
                針の影が動いていくものだ。
                         子供心になんか不思議な気がしたものだ。
                   大人になるころはこの日時計が、
                 公園に設置されたりしてきた。
            たぶん子供のころに、
                         日時計を作ったりした経験のあるやからが、
                      提案して作られたのかもしれない・・・。
                       このような公衆日時計を眺める世代は、
                                だいたい子供のころの記憶の琴線に触れるものがある。
                              ただ、朝見た影が帰りには逆になってるのを見ると、
                時間の流れが具体的であり、
                              朝の元気が帰りにはおくたびれに変わってることが、
                              自分の持ち時間を計るメーターのようになっていて、
                     なんともゾッとしないこともない・・・。
                  イチローの安打記録を現すのに、
                       イチメーターというのを作ってる人がいた。
                       これは記録を伸ばすのを示すものだから、
                 誰が見てもいいものだと思う。
                   逆に日時計の影の移り変わりは、
            残りの時間の長さが、
                       短くなっていくのを示していくものだから、
                あまりいいものでもない・・・。
             こういうものの回りには、
                     花が植えられていることがほとんどだ。
                 それが可愛い金魚草であっても、
                       なんかいま一つの気分は変わらない・・・。








十薬やメタボに敢て逆らわず
              ある年齢を超えてくると、
                   話の内容が徐々に変わってくる。
                     20代30代は彼女彼氏の話が主流。
               その話で座が盛り上がる。
                     彼氏彼女がいない連中にとっては、
            いま一つではあるが、
                   適当に話を合わせてついていく。
                   40代になると仕事の話が主流だ。
                部下上司というところだろう。
                      彼氏彼女という話も片鱗は残っている。
                              しかし、話と話しのつなぎ程度になってしまっている。
                           50代になると定年の話がそろそろ出てくるのと、
                        リストラの話題なんかも出てきやすくなる。
                  それとそろそろ薬の話が出てくる。
          この年代になると、
                       どこかしら調子の悪いところが出てくる。
                              何の薬がどう効くのかという熱心な品定めなんかが、
                  口角泡を飛ばして語ったりする。
                60代になるとほぼの薬の話。
                        男とか女とかはもうどうでもよくなってきて、
                    どういう薬がどう効くかの効能から、
                        どうこの医者からはどういう薬が出る・・・。
                   などなど話題はそれこそ尽きない。
         メタボというのが、
                            かなり重要な単語になってくるのもここから・・・。
                     薬の話が熱心に盛り上がるわりには、
                        メタボが解消されたという話は出てこない。
                薬の元になるメタボのことは、
                 皆さんけっこうメタボのわりには
                               この大本の話は皆で避けて通ってしまうのだろう・・・。







句会員の句


今さらと秋の日長二に髪染める

思い出のおはぎほおばる日暮れかな

秋風に思わず軽やか草むしり




主催者吟


秋の夜客一人乗せ過ぎるバス

階段にどんぐり増えて伸びし影

幾重ものすじ雲越えてセスナかな

コーヒーの湯気濃くなりて秋の風

陽だまりにこおろぎ引ける蟻の群れ




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