渡辺さんの俳句傑作選






2014年 5月の俳句





砂丘に落つ駱駝の涎梨の花
         駱駝と聞くと、
                   すぐ思い浮かぶのが「月の砂漠」
         有名な歌曲だ。
                 若干人間が古なったせいか、
                       すぐにこの歌の雰囲気に飛んでしまう。
               哀愁のあるメロディー・・・。
                           思い浮かべるシーンは月に照らされた砂漠を、
               二頭のラクダが行く・・・。
                      前には王子様、後ろにはお姫様・・・。
                なんかロマンチックですね。
              しかし実際の砂漠では、
                      夜歩き回ることなどは100%できない。
                            茫漠たる砂漠では方角も分からないらしい・・・。
                          作者も実際の砂漠を見たこともないらしい。
                       鳥取砂丘あたりがモデルだという話だ。
                      話はいきなりグッと規模が小さくなる。
                砂丘に涎を垂らす駱駝・・・。
               さらに現実的な風景・・・。
                      ロマンチックな雰囲気はどこにもない。
               しかし、梨の花の季語が、
                            なんか透明感のある空気感を醸し出してはいる。
          お姫様を乗せて、
                            なんだか口をモグモグしながら涎を垂らす駱駝。
                         そこの超現実的な映像にかすかに透明な、
            場面の右端くらいに、
                      透明感のある空気感を持ってきている。
                  なんとも勝手な解釈というのは、
                   どこまでいっても果てしないです。
                         そこを楽しんじゃうのが俳句の真髄かも・・・。








蒸し鰈ピカソの顔は非対称
               
          絵画史上最高の画家ともいわれるピカソ。
                      キュピズムという絵画の分野を創造し、
               数々の作品を世に残した。
        これが凄い!!
                          素人目には何がいいのかさっぱり分からない。
                 これが芸術というものだろう。
                  誰にでも分かるというものでは、
             大衆迎合ということで、
               無価値となってしまうのだ。
                           見る人が見て凄いということになると凄いのだ。
            ピカソくらいになると、
                   単なる写生というのは簡単すぎて、
           かえって価値がない。
                            ピカソの素描となればもちろん価値はあるのだが、
                   なんだか分からない絵に比べると、
           一段低くなってしまう。
                   レオナルド・ダ・ビンチの素描などは、
           スーパーリアリズムで、
            本物と見間違うほどだ。
                これは凄い価値が付いている。
             しかし、ピカソともなると、
               そのまた上をいっているとなる。
                  ピカソの顔が非対称と見えるのは、
                      人間綺麗に対称の顔というのはまずない。
             しかし、ピカソの顔となると、
              キュピズムから見てしまうから、
                      ますます非対称の度合いが上がってしまう。
                            ピカソの作品とピカソの顔を交互に何度も見比べると、
                 まあ、万華鏡の怖さを感じるね・・・。
                  蒸し鰈を美味しく食べられるかどうか、
                   これはあなたの芸術力にかかってるね。









梨の花甲斐路の果ての道の駅
           
                いまNHKの朝ドラで甲府が主役になっている。
                毎回朝ドラは見てはいるが、
                        初回に甲府弁がさく裂したのには驚いた。
                       「ごんす」というの甲府弁あるんですね。
                     なかなかの方言で初めて聞くせいか、
                  初回からかなり引き付けられた。
              自分だけかなと思いきや、
                      いまだかなりの高視聴率を他っている。
        主役の女優は、
                           嫌われ度の高い女優ということで有名なのだが、
                  いきなりその評価が覆ったようだ。
                        役柄が嫌われている部分と良くマッチして、
             好感度が上がったという。
                       人間分からんもんだなといきなり思う・・・。
         道の駅というのは、
                  今やどこの県でも当たり前にある。
                     出てきた当初はかなり話題にもなった。
          それが今や定着して、
                    道の駅巡りなどが流行っているという。
          山梨県などと聞くと、
                 いきなり葡萄のイメージが広がり、
            トロンとした気分のなる。
              勝沼ワインも有名ブランドだ。
                   甲府と聞けば「信玄ほうとう」がある。
            甲斐路の果ての果てまで、
                    美味しいイメージが途切れることはない
                         美味しいイメージのある県は道の駅も得なのだ。









突然の別れの予感シャボン玉
              この予感という単語は、
                        出会いと別れの物語に味わいを添える、
               欠かせない単語だと思う。
              安全地帯の歌にもある、
              恋の予感〜〜〜が・・・。
                        なんてそれなりのメロディーで歌われると、
                       聴いてるほうの感性に色がついてくる。
                         予感という一言でこれだけ違ってくるのだ。
           予感という言葉は、
                     多彩な色どりを放つ言葉ではあるが、
                       競馬の馬券となるとこれは切実になる。
             つい先日のダービーでは
                      大本命のハープスターがまさかの二位。
                    ここで大本命という下馬評の中で、
           いや・・・待てよ・・・。
                           ダメかもしれないと予感が働いたかどうか・・・。
                             しかし、これはまあ少し損したでなんとなく終わる。
                          しかし、生死を分けるような場面での予感は、
                  これはラッキー、アンラッキーが、
                はっきり分かれてしまうので、
            嫌に深刻な単語となる。
               出会いの予感、別れの予感。
                           これが単にこんにちは、さようなら・・・だけだと、
                     なんか味わいを感じることができない。
                           なんだかググッとこみあげてくるものがないのだ。
            小説などというものは、
                   このググッとこみあげてくる単語を、
                           いくつ入れられたかで評価が大きく変わってくる。
                 予感とかそれに類似した単語は、
                            出しどころ次第で大きく効果を上げることができる。
           小説の良し悪しなどは、
            結構そこのテクニックを、
                  器用にこなせるかどうかだろう・・・。
                           別れの予感の後にシャボン玉がつい来るところに、
                   この句の味わいがあるのですよ・・・。








ぶらんこを漕いで憂鬱を手なずける
                       2014年もついに梅雨の季節に突入。
                         真夏を思わせように上がり続けた気温も、
                       一気に下がって肌寒いくらいになった。
                      朝からどんよりと重〜〜〜い空気感。
                          会社にも学校にも行きたくなくなるような朝。
                       家の玄関を出る理由などを探してみる。
                        もうすでに気分は出たくないわけだから、
                            そういう気分を納得させるだけの理由が欲しい。
                ちょっとしたような理由だと、
                  かえって行きたくなくなる気分が、
            大きくなってしまう・・・。
                        ここが人生をそれなりにこなしてきた人と、
                         まだ道少しでこなしが足りない年代との差が、
             はっきり出てくるところだ。
                人生をある程度こなしてくると、
                            どんな気分も無視するテクニックを身に着けている。
                           なんだかいきなりどんよりした朝の気分の凸凹を、
                      いやに自然に平らにならしてしまう・・・。
                これが未熟だと気分の凸凹に、
                    思わずつまずいて転んだりしてしまう。
                       ますます嫌な気分を持ったまま学校へ・・・、
                 なんてこともあるんだろうと思う。
                   昼食を食べて公園があったりすると、
                そこのぶらんこに腰かけてみる。
                 ブランコに座ってゆらゆらしてると、
                         子供の頃とか大人になりたての頃とかの気分が、
          ごちゃごちゃと混ざって、
                         憂鬱な気分もなんだか薄まっていくんですね・・・。
                 これも今の時期のテクニックですな






句会員の句


ポカポカと思わずはずむ草むしり

五月晴れ白髪ばかり同期会

久々の日差しに新芽一斉に





主催者吟



ベランダのだらりと下がる鯉のぼり

あじさいの葉奥に雨を待ちにけり

腰掛し老婆ツバメを追いにけり

暗譜とは自己の鍛錬牡丹咲く

強くなる雨の匂いや梅雨近し





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