渡辺さんの俳句傑作選










6月の俳句





頼朝の 無骨な坐像 初音かな
         
源頼朝といえば、
                              今年のNHK大河ドラマでの源義経の準主役であり、
                  最後に恨まれ役になる人物だ。
                             なんとも歴史上も恨まれ役に徹してしまっている。
                      義経の平家との合戦の鮮やかさが、
                         評価の対象になっているからだと思うが、
                                   実際は義経では太刀打ちできないほどの大政治家であり、
                  国の形を作り上げたわけだから
                         義経より評価がもっと高くてもよいわけだ、
           が、そうはならない。
                            庶民感覚の厳しさを物語っているわけだ・・・・。
                               そういう思いで頼朝の坐像を見るといかにも無骨で、
                                        実際は肖像画で見るよりもずっと純朴な人柄ではなかったかと思う。
                                           しかし、政治家とは庶民から、まず疎まれる対象になるのか人気がない。
                                   頼朝によってあの時代は平和になったと思うのだが・・・・・。
                                        皆、戦争を批判しながら、実は戦争のヒーローがすきなんだろうな。






大仏は パンチパーマよ 雲の峰
                  
鎌倉の大仏の頭を眺めていると、
                  どうもいい具合にかかりの良い、
                パンチパーマのように見える。
                           パンチパーマといえばこわもてのイメージがある。
                      怖いお兄さん達をつい想像してしまう。
                    大仏もあのままサングラスをかければ
                         結構迫力のある顔になるのではないかと思う
                      四角い顔で眉間になんとなく険があり、
                      すっくと立ち上がれば世の中の巨悪を、
                  一気にお仕置きしそうなのだが、
                              実際はそんなことは鎌倉の昔から一度もないようだ。
                昔の大魔神という映画では、
                               埴輪顔の穏かな表情が怒りで仁王のような顔になり、
                              悪人をバタバタなぎ倒していく爽快な場面があった。
                        サングラスとパンチパーマの組み合わせで、
                       鎌倉組の組長という雰囲気になるのだが
                       巨悪を倒してくれる様子はないなー・・・・・
                              やはり観光の目玉の地位は変わらずというところか、
                           おっとりと初夏の入道雲が似合うのかな・・・・・。





向日葵や 地平線まで 続く墓地
                       ひまわりといえばまず思い浮かべるのは、
          スペインの大地だ。
                      一面のひまわりがはるかに続いている、
                                     終わりが分からないほど広大なひまわりの大地が続いている。
              ちょっと古い話になると、
                           ソフィア・ローレンが主演した映画「ひまわり」だ。
                           この映画のラストシーンもひまわりが印象的だ。
                              戦争映画だが、同じサイズのひまわりの続く光景は、
                                 その一本一本が死んでいった人々の墓標のように見える。
                                墓石が続く墓地とは比較にならないほどの数の人間が、
           実は死んでいるのだ。
                           ひまわりといえば、ゴッホのひまわりが有名だが、
                      あの絵の明るいひまわりの中の暗さが、
                          人間のもうひとつの世界観だといわれている。
                          ゴッホの精神性は、そこを描いていたのだろう。
                                  大地に無限に続くひまわりは、人間の死の限りない墓標を、
                   視覚化したものなのかもしれない。
                              と、梅雨入りしてから晴れの日の続く蒸し暑い夜に、
                       ボケッと天井を眺めて思いをめぐらせた。






蟻地獄 妻はやっぱり 生き上手

           
今の日本の社会は、
                     誰も何を信じていいのか分からない、
                  そういう時代に入ってきている。
                 高度成長期の日本の社会は、
                                        となりの同僚、上司を信じていて仕事に打ち込んでいればよかった。
                        しかし、銀行の護送船団方式が崩れて、
                           誰も明日の自分の社会が信じられなくなった、
                          今の社会を蟻地獄に例えたいと思うのだが、
                             表立った反対意見というのはあるだろうか・・・・・。
                                  いったんすべり落ちれば這い上がることはきわめて難しく、
                       もがくほどに首が絞まっていく状況だ。
                            しかし!その状況の中でますます女は強くなり、
                           男はますます悲哀の影を引きずるようになる。
                                 東から昇る太陽を「西から登っても別に問題ないわ」と、
            カラカラと笑う妻に、
                           世渡りの極意を見せ付けられて、脱帽・・・・・。
                                 太陽は東から・・・・とついこだわって鬱々とする男族は、
                          どうにもパッとしない世の中のシミのような、
                                   なんともいえない存在になってしまっているのかもしれない。
 




タレントの 茨城訛り 半夏生

                                 
最近のタレントと呼ぶ方達の個性のない姿を見ていると、
                                    芸能の世界もつまらなくなったもんだという気がしてならない。
                芸の世界を面白くするのは、
                               個性と個性のぶつかり合いを見るときだと思うのだが、
                      皆、没個性を装ってテレビに出ている。
                           ぶつけ合う個性があるようにも見えない連中の、
                       大騒ぎを見ていてもまったく面白くない。
                                     ぶつけあう個性もないからネタがなくなるとすぐ下ネタに逃げる。
                      テレビに出ているタレントのほとんどが、
                       良い子に収まろうと努力しているようだ。
                                     笑わせる、泣かせるという感情の起伏に訴えるような芸もなく、
             のっぺりと出演している。
                      たまたま茨城訛りで話すタレントがいた。
                        訛りを矯正することもなく、しゃべっている。
                    地方の訛りを都会のテレビで聞くと、
                   なんとなくふっと緩む部分がある。
                       うんと地面に近くなるからだろう・・・・・。
                       夏の始まりの湿気のある地面の臭いだ。



長命も 忸怩たるもの サマータイム
          
偉大長寿国日本!
                                今まさにサータイムを導入するかどうか議論の最中だ。
                     毎年出る話という気もするが・・・・・。
                   サマータイムで余裕が出るのは、
                          実は大企業に勤める人たちなのではないか
         という話がある。
                                   まあ、中小の企業のほとんどは今でも長い時間仕事がある。
                    サマータイムで時間が長くなれば、
                        それだけ仕事時間も長くなるだけだろう。
                            消費が増えるのは長くなった勤務時間のための、
             弁当代といことだろう。
                                           しかし、サマータイム導入で確実に伸びるといわれている余裕の時間で、
                                   日本国の人間の長寿という器は確実に大きくなるだろうな。
                           恥じのかき捨ての量も増えるというのもですね。







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