渡辺さんの俳句傑作選










7月の俳句





金魚すくう 白き歯列の 異邦人
                          お祭りにはいろいろな屋台の店が出ますが、
                                 金魚すくいというのは、そのなかでも花形的なお店です。
                                   子供の時は、何で上手くすくえないのか不思議に思ったり、
                     たくさんすくうにはどうしたらいいか、
                                 いろいろ考えているとわくわくして眠れなくなったりした。
                                    最近では金魚をすくいながら、にぎやかな親子を眺めながら、
                                 平和を肌で感じられるのがいいなーと思ったりしている。
                   そんな中に海外の人が混じって、
                         金魚をすくいながら声を上げて笑っている。
                                テロ多発で、どこが安全なんだという国が多いなかで、
                      この平和な日本のお祭りに参加して、
               まったく無防備な笑顔で、
                            真っ白な歯を見せて笑う外国の人を見つけて、
                                  その歯の白さにドキッとひっかかるものを感じてしまった。







梅雨寒や 午後は一人で ヨーヨーマ

                            
今年の梅雨はいやに暑い日が続くかと思うと、
                                            一気に寒くなって、あわてて半そでを長袖に着替えるという日が結構ある。
                  しかし、人間不思議なもので、
                                  暑くなってくると内面などというのは、さらさらなくなって、
                             カっとして晴れた夏空を恨めしく眺めてるのみだ。
                         これが一気に目覚めて涼しい日が来ると、
                       突然しんみりした気分が湧き出てきて、
                                 ズーズーしくも昨日までの恨めしい気分まったく消えて、
                          考えもしなかったチェロのCDを聴き始める。
                                   この落差を可笑しくもあり、また防ぐことも出来ない・・・・・。
                                    特に、ヨーヨーマのリベルタンゴの入ってるCDがいいようだ。







五月闇 ふと口ずさむ 四段活用
                                       
雨がシトシト・・・・・昔のグループサウンズの歌の歌詞ではないが、
                                  梅雨に降る雨は低い雲から隙間をもって細く降る・・・・・。
                                陽がさすことはなく一日中降れば一日中暗い・・・・・。
                                  五月に暖かくなってようやく活気が出てきたはずなのに、
              一気に気分が重くなる。
                   物が安くなって喜んでいる時に、
                             バサッと消費税がかぶさってくる気分だろう・・・・・
                   そんな暗さの中を歩いていると、
                              考えている言葉が四段活用になってしまっている
                          中世平安時代の闇が目の前に迫っている、
                            しかし、歩幅も変えずに歩き続けている・・・・・・








サングラス 陰陰滅滅たる 自分

            ついに夏が来た!!
                            毎年のことながら日差しの暑さは半端ではない。
                                これが日本の夏・・・・・だったのだろうか・・・・・????
                                 美空ひばりが「きんちょうの夏、日本の夏」と言っていた、
                       あの日本の夏とは思えない夏の連続だ。
                 一番記憶にある夏の情景は、
                       朝夕が涼しくて昼が暑いという毎日だ。
                                       朝は曇っているのに昼は晴れるというのが不思議に思えたころだ。
                           今、朝も何も気温は変らず・・・・・暑いままだ。
                                        熱帯夜が当たりまえになっていて、それ以外の言葉はほとんどない。
                             そういう夏の日差しに思わずサングラスをかける。
                           日差しがまぶしくなったのは年のせいか・・・・・。
                                 夏の記憶が増えるたびに、日差しがまぶしくなる自分を、
                        実は、はっきり見たくないのかもしれない。







麦飯を 食って備える 会議かな

                                
会議などというものはほとんどの場合誰も聞いてない。
                       聞いているフリはしなければならない!
                                   発言する意欲をみなぎらせて、目が輝いていないといけない
                                しかし、実態はただ早く終ってほしいと思うことが多く、
                             画期的な意見がでることもそう多いわけでもない。
                                 そういう会議が開かれている間は安泰ということだろう、
                  深刻な表情が支配的になれば、
                    明日の自分の影も薄くなってくる。
             要するにヤバイ・・・・・。
                            なんでもない会議でも意欲をみなぎらせている、
                       深刻な会議でも頭をハッキリさせておく。
               そのためには今は麦飯だ!




夏木立 松本楼の お品書き
                   日差しが高く強烈になるごとに、
                     公園の木立の色は濃くなっていく、
                           新緑の時の初々しさは消えてなくなっており、
                          緑は一段と濃くなり、大きく枝を広げている。
                 その前を毎日通っていると、
                        新緑からたくましくなっていく木立・・・・。
                   そして散っていく一枚一枚の葉。
                         人間の一生を毎年見ているようなものだ。
                時間の長短があるだけで、
                        実は地球も何も結局同じことなのだろう。
                    日露戦争のとき焼き討ちにあった、
                        松本楼の前を通る時に目にするメニュー。
                           これも通る人が入れ替わるたびに変えられて、
                              明日にはもう変えられているのかもしれない・・・・。







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