渡辺さんの俳句傑作選








12 月の俳句





あんこうの ひげまで煮込む 慰労会
           慰労会というのは、
                       ご苦労様をお互い言い合う会なのだが、
                たぶんにその集団に対する、
                         個人的な怨念も内包していることが多い。
                                 あんこうなべの前で、醜いひげまで煮込んでしまうのは、
                    そういう気分のあらわれか・・・・・。







小春日の 羅漢の耳の ピアスかな 

               
寒い冬の日も風が止み、
                     太陽の光がさんさんとする昼時は、
              気分は開放的になる。
          なんとなく緩む。
                         こんな日に、我妻のピアスを見つければ、
                             この句真ん中あたりに読まれている通りなのだ。







冬ざるる ベネチアグラス 美術館
             
紅葉もそろそろ終わり。
                         街路樹も葉っぱを風が吹くたびに散らして、
                     前のお店のお母さんを悩ませている。
                           梅ノ木などは完全に骨組みだけになっている。
                             殺伐とした中、ベネチアグラスの美術館に入ると、
                       鮮やかな色彩が目から飛び込んできて、
              全身に沁みていく・・・・・。
          生き返る瞬間だ!。
             外に出れば瞬時にして、
                    冬枯れの元に戻ってしまうが・・・・。








積ん読の 本につまずく 師走かな
                    今年一年間、買い続けて本が、
                      鍾乳洞の石筍、石柱のように成長した
             本の柱がいくつかある。
                           いよいよ押し詰まって気ばかり焦る毎日・・・・。
                               あれやこれやで一杯の頭のまま部屋に入ったとたん、
               つまずいて一気に崩れる。
                   まあ、怪我なく無事なでよかった。







携帯の GPS 見る 冬銀河

           
自分の今いる位置を、
                     携帯で調べると正確に教えてくれる。
               では、旅をしている地球が、
                         今、どこにいるか教えてくれるだろうか・・・・。
               真冬のさえた空を眺めると、
                  今の地球の位置を知りたくなる。
                       自分の次の位置も分かる気がして・・・・・







もの聞けば 頭痛のもとや 冬の虫
                 
もの言えば唇が寒いのが秋。
                慌しくなる一方の今の季節、
                 外から聞こえてくる人の声が、
               今の季節の虫の餌であり、
             その虫の成長とともに、
                    脳みその外辺部が痛み出す・・・・。








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