渡辺さんの俳句傑作選
1 月の俳句
三世代 イグアナもいて 初写真
子供、両親、おじいちゃん・・・・・。
ここまで揃って各年齢を足せば、
100年軽く超える年月になるだろうか・・・・。
しかし、イグアナを隣におけば、
その年月ははるかに長くなり、
恐竜時代に手が届こうというところだ。
イグアナからおじいちゃん、両親、子供も順に眺めたら・・・・・、
子供から、両親、おじいちゃん、イグアナの順に眺めたら・・・・・。
これは同じ時間の流れであっても、
見え方は、まったく違うだろうな。
チンパンジー もんどりうって 初御空
チンパンジーという類人猿は、
人間の元々の姿だといわれている。
後姿を見ると歩き方が妙だ・・・・。
やはり樹上動物ということを思わせる。
人間もチンパンジーから進化した部分というのは、
実は歩き方がうまくなっただけなんじゃないだろうか・・・・。
転び方はチンパンジーのほうがうまくて、
人間になると一度転ぶとなかなか起き上がれない。
今年の新年は曇り空だった・・・・。
こんなことを問題にするのも人間だけだろう。
チンパンジーよりマシになったというのは実は大いに疑問だ・・・・。
マラソンの 土産にもらう やせ大根
今の時期日曜のテレビランに、
マラソンレースの番組がひとつくらいは必ずはある。
こういう勝負事というのは一位が最高で、
テレビ画面の中央でインタビューがある。
これは本人にとっては大きな財産になる!
3位くらいまではまあまあかもしれない・・・・。
しかし、なんといっても大多数はその他である。
たとえるなら、女房の実家にいって、
帰る時、持たされるちびた大根のようなものだ。
大枯野 昭和一桁の キングコング
そもそもキングコングというのは戦前のSF映画であり、
今回の映画は、何度目かのリメイク版だ。
このモンスター世代というのは、
戦争をくぐって日本をここまで繁栄させた張本人たちだ。
張本人という言葉はいい意味でも悪い意味でも使われるが、
悪いほうへ座布団二枚くらいか・・・・。
大繁栄させた日本の大地は、
カラカラに乾いてしまった。
この乾いた大地いっぱいに、
今やキングコング以上にモンスター化した何代目かの世代が、
大股で歩いている。
懐旧へ ダッチロールの 冬の蝶
少子化が進んでいる。
子供の数が減っているということだ。
子供の数が減れば子供の回りに、
子供がいなくなるということだろう。
今の老人たちのような、
毎月クラス会というのも、
だんだん姿を消すだろう。
少子化世代には子供時代の思いが希薄になり、
子供時代に戻って語りたくても、
回りが希薄になってしまうため、
一つ思い出を手繰るのも、
きわめて大変な作業になるだろう・・・・。
自販機に お礼をされて 春隣り
最近の自動販売機はコインを入れて、
品物が出てくるとお礼をきちんと言う。
ファミリーレストランに入ると、
これまたきちんとお礼の言葉が出る。
どこへ行っても自販機と同じ言葉がかえってくる。
抑揚のまったくない言葉のシャワーの中・・・・。
ヤングファミリーがこれに慣れて、
その子供がこの自販機言葉を覚えて、
その通りに話すようになり、
ついには日本語がロボット語化する日が来る。
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