渡辺さんの俳句傑作選








9月の俳句






検索のエンジン燃えて夜なべかな
                   インターネットの普及というのは、
                       人をめぐる知識の泉を広げただろうか?
                     実は知識が広がったわけではなくて、
             調べる手間が省けた、
                       というところまでじゃないだろうか・・・・。
                                  ほとんどの人は、パッと見聞きしたことはパッと忘れている。
                やはり身につくということと、
                          たんに知るということには違いがありそうだ。
                      しかし、便利になった部分というのは、
                           絶対に捨てることは出来ないのが人間であり、
                            必要がなくても思い浮かぶまま検索にかけては、
            読んで満足している。
             次の日が休日であれば、
                    それこそ一晩中検索し続けている。
            パソコンは熱く燃えて、
                       検索エンジンも反応しなくなるくらいだ。
                         寝て起きてしまえば綺麗に元のままだ・・・・。








蟷螂(カマキリ)の後姿にはっとする
                カマキリというのは前足が、
                          草刈の鎌のように発達している昆虫である。
                        草むらに行けば大体見ることが出来る。
                  中には相当大きなものもいて、
                        その存在感がいやに大きなものもいる。
                 その蟷螂を後姿で見たとき、
                            その向く方向には鎌で首を切られる虫がいて、
                 その最後の時を予想させる。
                     後ろから見ているのが自分で・・・・、
                            しかし、もしこれが逆転したらどうであろうか。
                       首を切られる寸前の自分が前にいて、
              今、自分のいる場所に、
                     今、切られようとしている虫がいる。
                              これは想像したときに、ドキリとさせられる状況だ。








紅葉山瀑布一角くずしおり
                                  これからの季節のメインイベントが紅葉ということだろう。
               この紅葉の当たり外れは、
                    時にその人の吉兆を占ったりする。
                偶然の要素が強いのだが、
                        ついついというのが人の心理かな・・・・。
                    山奥の綺麗に流れ落ちる瀑布は、
               そのまま見たいもの・・・・。
                   そういう所に限って紅葉の枝が、
               しっかり張り出していて、
                      体を傾けてみようとしたりするのだが、
                 完全には見えないもの・・・・。
                  見事な紅葉でもこういうときは、
                どうもやはり満足できない。








銀杏散る整然とあるベビーカー
             銀杏並木というのは、
                         あれば、必ずその下を歩きたいもの・・・・。
                       秋の風情を最もよく感じられるところ。
                             そういう所に置かれているのがベビーカー・・・・。
                     お母さんと赤ちゃんは大体いない。
                          不思議と目にはいるところにはまずいない。
                       どうしてここに置いてあるのだろうと、
                            なんとなく不思議な気分にさせられるものだ。
                        銀杏の葉が散って、その中にある・・・・。
                      この親子は、自分たちの先の姿を、
                 見に行ったのかもしれない。
                  銀杏の葉が散る向こうには、
                             こことは違う時間が流れているのかもしれない。








眼鏡してジョン・レノン似の菊人形
                       秋深しといえば、菊がまず思い浮かぶ。
                    菊といえば菊の花の展覧会・・・・。
                  見事な一輪の菊の花もいいが、
               細工物もなかなか面白い。
          面長に造られて、
                    針金を曲げた眼鏡をかけていると、
                俳句を作るような世代には、
                      ジョン・レノンがすぐ思い浮かぶ・・・・。
             その下の世代になると、
                  誰を思い浮かべるのだろうか?
                                すでに世代ごとのコミュニケーションがなくなりつつある。
                                  ジョン・レノンが分かる世代もだいぶ底上げされてきている。
                                 はるか下の世代の人物像は、すでにまったく分からない。








主催者吟

雲割れてキバナコスモス輝けり

振り向けば影長くなり午後三時

毬(イガ)刺して泣きそわが子も17歳






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