渡辺さんの俳句傑作選








5月の俳句






春愁のとなり鉛筆なめる僕
                                 5月の声を聞くとだいたいズンと湿気が重くなってきて、
                     その重さを背負わされるのかどうか、
                               体全体がなんだか一年の中でも一番重く感じられる。
                  5月は新入社員も増えてきて、
                           毎年自分の椅子の回りが狭まっていくような、
                 なんともいえない気分がある。
                            年齢がいけば経験勝負だという話もありますが、
                           実際は天井への距離が短くなっているわけで、
                             教えるたびにぐっとその距離が縮むわけです・・・。
                      となりをチラッと横目で気にしながら、
           鉛筆舐め舐め・・・。
                          今日も、明日も、あさってがあるのかなぁ・・・。







春の闇BeBeと呼ばれし女優かな
                                冬の夜は空気が引っ張られるだけ引っ張られたような、
                          張り詰めた夜の闇が伏し目がちにさせる・・・。
                  太陽の位置が深くなってくると、
               風に乗った湿気とともに、
                     上がりきらない温度が皮膚をなでる。
                         月もモヤのベールを常にかぶるようになり、
                    片目で見ているような風情だ・・・。
               見た目ではどこ見もない、
                                深い孤独との戦いだったというブリジット・バルドー・・・。
                     なまめかしい春の夜とはかけ離れた、
                             大女優の魂をどこで見ることができるだろうか・・・。







団塊の人と括られ葱坊主

                  いよいよ団塊世代の大量定年。
                      太平洋戦争後生まれた人達のことだ。
                   この世代はとにかく人数が多い。
                        戦争で一気に減ってしまった人口の数を、
                      できるだけ戻そうということでもないが、
                       とにかく戦争世代の産めよ増やせよが、
                      良くも悪くもいきていた時代の人達だ。
                              種の保存の本能が最もはたらいた世代というか・・・。
                        大和民族が一致団結した結果の人達だ。
                      その団塊の世代が一気に定年となる。
                             束ねて積まれていく葱坊主の風情有りですな・・・。
                                霊園のセールスにとって最後の大商いになるらしい・・・。







またひとつ加齢現象梨の花
                         40歳あたりから気がつき始める老化現象。
            気がつくというより、
                         分からせられると言ったほう適切かも・・・。
                女性はどうか分からないが、
                               男というのは5歳づつダメになっていく自分の部分を、
                名指しで明確に知らされる。
                     だからなんなんだと抵抗してみても、
                        ダメになったところは認めざるを得ない。
                       名前が思い出せないなどが最初か・・・。
                ひとつひとつ指折り数えて、
                            折る指が一本増えたと認めようかどうしようか、
                   見上げたところに梨の花か・・・。







蕗のとうスローライフを決めし朝
                               ふきのとうの味噌和えなんかが美味しい季節ですが、
                           若い時というのはこういう和え物というのは、
                         だいたい食べてもなんだか物足りない・・・。
                         量も少ないしそれ以上の食欲があるから、
           ということもある。
                            中年あたりから毎日の食べる量が決まってくる。
                           このあたりから和え物に目がいくようになる。
                  季節ものの和え物の話題が、
                 同じような世代の連中から、
                   会話の中に出てくるようになる。
                              なんだか食事時間そのものも遅くなったような・・・。
                   仕事のことはとりあえず考えず、
                            ゆっくりいきるかと自分本位に決めてみるのが、
                気分をゆったりさせる・・・。
                                      しかし、しょせん仕事はそんな気分に応じてくるわけがない・・・。







主催者吟


ふるさとの雨の匂いやツバメ飛ぶ

思い出のカフェのテラスやつつじ咲く

置き去りの靴にあふれる梅雨の雨

夏日なる日暮れの風に鳴る障子

紋黄蝶深夜のホームに群れており




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