渡辺さんの俳句傑作選








8月の俳句






塾の子の大きな荷物星月夜
                         夏休みで休んで遊びまわる子というのは、
                     今現在どのくらいいるのだろうか。
              小学校の低学年には、
                      それなりにいるのかもしれない・・・。
                      高学年から上の学校の子供たちに、
                 夏休み遊んだかと聞けば、
                   遊んだという答えが返ってくる。
                       ほとんど海外に行ってきたという話だ。
                              三々五々どこからともなく集まってきたガキどもが、
                             一団になって遊ぶというのはもうないらしい・・・。
                       勉強も遊びもしっかり管理された中で、
               大人になる子供たちって、
                 不幸じゃないんだろうな・・・。
                             不幸が何か知らないまま生きていくんだから・・・。
                                 不幸を知らないまま人生を終わるなんてありえない・・・。
                                  知らないであの世に行けばやはり知らないままなのです。
                       それが不幸だなんてとんでもない・・・。









パソコンのフリーズ解けぬ厄日かな
                    パソコンがない生活というのは、
                 ほぼ現代人ではありえない。
                     それほどパソコンに依存している。
                                  パソコンのなかった時代の生活ってどうだっただろう・・・。
               だれも覚えていない・・・。
                         っていうか、イメージできなくなっている。
                                   パソコンのパワーポイントで会社の資料を作っている・・・。
                       学生が実験データを入力している・・・。
          もう少しで終了。
                             大体こういうときは出来がよくかけているものだ。
                                       しかし、パソコンはこの世の無情を全部背負ってきたかのように、
                      お構いなく固まって動かなくなる・・・。
                                  これまでの人生とこれからの人生が同時に固まるときだ。
                    こういう時は一度電源を切って、
                           起動しなおすのが一番手っ取り早い・・・!!
               しかし、いうまでもなく、
                   せっかくよく書けている資料は、
            瞬時に消える・・・。
                              現代ではこの瞬間を厄日だということで語られる。
                        もう男42歳、女35歳が大厄なんて・・・、
                     だれも言わないしすぐ死後になる。









人前で化粧する人敗戦日

          一日出かけると、
                              必ず一人くらい化粧を目前でしている女性を見る。
               電車の中、喫茶店の中、
                             喫茶店といってトイレで化粧をするわけではない。
               隣の席でバンバン塗って、
                バサバサ髪をとかしている。
                    フケが飛ぼうが何するものぞ!!
                   迷惑など気にする暇もないのだ。
                            まあ、何らかの大きな見返りがあるのだろう・・・。
                       いまやボケッとしていて飛んでくるのは、
                      女性が顔をたたいて飛んでくる匂いと、
                   くしで勢いをつけられたフケ・・・。
                      悲惨な太平洋戦争終結の日とともに、
               飛び道具がなくなった・・・、
                     なんてことを思ってちゃいけない・・・。









行間のメモの青春曝書かな
           若き日というのは、
                       本を読んでは新しい知識が入ってくる。
                   本ばかりでなく、接したことから、
                             どんどんイマジネーションを広げることが出来る。
                 すべてにおいて新鮮であり、
                 まずもってみずみずしい・・・。
                          ちょっとした本を読んでいるときというのは、
                                これまた偉業も無駄にしないぞ、という覚悟の元に、
                        ここぞというところにはすべて線を引く、
                         熱が入ると色を変えて線を引いたりする。
                             間違いなくこのくらいの歳頃が一番輝いている。
            今はどうかなぁ・・・。
                本を開くと目がつらい・・・。
                        線を引いたところで読み返すこともない。
                          大体ブックオフにそのまま直行だったりする。
             ただ、若き日の本は、
                               なぜかしっかり押入れの奥になんかに保存している。
                            取り出して読み返してどうということもないが、
                               あの日の輝きの匂いだけは忘れたくないんだな・・・。









立秋やギターの弦を張り替える
           夏に突入した時は、
                   いかに夏を乗り切るかの一点に、
              気持ちは集中している。
                           温暖化の影響で日本の夏は熱帯化している。
                          若干昔の日本人になりつつある今日この頃、
                                  子供のころに体験したことのない暑さとどう向かい合うか、
                   自問しながら答えはまだない・・・。
                       まあ、襲ってきたらじっと耐えるのみだ。
                            まだ、団塊世代のこのくらいの年齢の者として、
                 物のなかった時代の我慢は、
                こういう時には発揮できる。
                    暑い中でも立秋という日が来ると、
                            とりあえず芸術に対しての志を立てようとする。
                                じーっと、暑さに対する我慢以上の我慢を重ねてきた、
                    ギターが意識によみがえってくる。
                    三日くらいは大体見てるだけ・・・、
                    四日くらいにネックに手をかける。
             弦の錆に気がついて、
             弦を取り替えるか・・・、
                                という気持ちとともにギターを演奏しようとする気合が、
           ポコッと沸いてくる。
                  立秋効果というやつだろう・・・。









主催者吟


ポツポツとギターも聞こゆ星月夜

「まだまだ」と行事の団扇残暑かな

夜霧来て思い出誘うカフェの窓

落ち蝉の羽に染みてる夕日かな

頂の風吹き降りてそろり秋




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