渡辺さんの俳句傑作選










8月の俳句





にきび面 集まってくる カブトムシ
              青春のシンボル、にきび
                               しかし、よく見るとカブトムシのいる木の幹に似ている
                                  学生帽をかぶって歩いてるとカブトムシに似ていなくもない
                     イメージということだろうか・・・・・・・・

              

摩天楼 借景にして 蛍の夜
                 超高層ビルが立ち並ぶ東京
              庭に蛍を放しての夕涼み
                   庭の外のビルを眺めながらである
                   日本の風流も様変わりしたものだ


みぎひだり 扇風機といふ 律義者
             スイッチを入れておけば
                          いつまでも左右に首を振り続けている扇風機
          多少蹴飛ばしても
               暑い暑いと文句を言っても
                         何一つ変えずに左右に首を振り続けている


まどろみの 猫かたわらに 夕端居(ゆうはしい)

                 
日中の暑さがだいぶ収まって
                      多少涼しい風が庭を通り抜ける夕方
                          暑さに疲れたか、猫がうつらうつらしている
                         縁側の端に座って猫の寝息を聞きながら
                          うちわを持って、暮れていく空を眺めている



跳び箱に 尻餅ついて 雲の峰
                   えい!と、勢いつけて手をついて
                 飛び越そうとした途端に落下
                       アーアと後ため息交じりで顔を上げると
                晴れ上がった夏空に入道雲
                 高い跳び箱の上から眺めると
                   またちょっと違った感覚があった


激辛の 海軍カレー 夏ツバメ
                       熱帯地方のようにうだる今年の日本
                終戦記念日が毎年この季節
                          この暑さは海軍の激辛のカレーを食べるよう
                        ゼロ戦のように飛び去る夏ツバメが見えた


お転婆は すたれ語となり サルスベリ
                     サルスベリはツルツルして滑りやすい
                     そのサルスベリに登っては滑り落ちる
                            また同じことを繰り返して悔しがる女の子がいた
                          昔はこんな子はお転婆娘と呼んで、差別した
                   悪い意味ではなく驚きを持ってだ
               今や若い女の子は皆活発
                       お転婆という言葉を聴くこともなくなった






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