渡辺さんの俳句傑作選








3月の俳句






星組のスターを泣かせスギ花粉
       宝塚歌劇団。
                        今だに女性のファンにはあこがれであり、
                   彼女たちのカリスマであり続ける。
                       その中でも星組は多くの男役を輩出し、
                      退団後も活躍しているスターが多い。
                         星組といえば少しオーバーな出し物が多く、
                       コスチュームもあこがれの対象になる。
                           ロマンに満ちた男役スターで一世を風靡する。
                             しかし、その反面歌唱力を問題視する声もあり、
                              それが花粉症の影響ではないかという憶測もある。
                           中国からの工業排煙をたっぷり含んだ黄砂と、
                          スギ花粉の蔓延は意外にこういうところで、
                          静かに猛威をふるっているのかもしれない。
                                 ロマンを高らかに歌い上げることの多い星組の男役が、
                花粉の影響から思わず・・・。
                    なんていうこともありうる状況に、
                       近年なりつつあるのかもしれない・・・。








白木蓮窓にミッキーマウスかな
                                 白という色には基本的に清潔感というのが付いてくる。
                         無垢なイメージが人間には共通している。
                           どんな色にも染まる可能性を持っているのは、
            とりあえず白だろう。
                          うすい色ほどいろいろ染まる可能性があり、
                           濃い色ほど単色のみということになりやすい。
                        黒色となれば他に色の選択はない・・・。
                        今の時期は木蓮があちこち咲いていて、
                          これがかなりの大型の花だからよく目立つ。
                          色は白と濃い紫がかった二色がほとんどだ。
                    春休みといえばディズニーランド。
                      はたしてミッキーマウスに似合うのは、
                   白だろうか濃い紫だろうか・・・。
                 やはり白のイメージかな・・・。
                           ミッキーマウスが無垢ということは断じてなく、
                                 見ている子供たちが無垢ということだからだろうな・・・。








花冷えや舅の介護ままならず

                       老いたる舅の面倒をみるということは、
                               感情と理性の境目の精神状態になってしまっている。
                            どちらにも転ぶしどちらにも転ばない境目・・・。
              淡々として動かさない。
                   動かさないと動けないの両方で、
                 がっちり固まってしまっている。
              どちらにもゆるくすると、
                                  大きく振子は振れて感情の際までいってしまう恐れがある。
                             際までいっても戻れる範囲であればオーケーだが、
                       戻れないということももちろんありうる。
                  その場合どうなるだろうか・・・。
                              でも、これは誰もその状態を語れる者はいない・・・。
                普通であればこんな状態を、
                       言葉に具体化するのは嫌悪感を伴う。
                   誰も聞こうとはしないだろう・・・。
                  しかし、全く動かない現実は、
           当事者にとっては、
                         まったくもってどうにもこうにもなのだ・・・。








春雷や猫一直線に横断す

            春も深まってくると、
                   暴風雨が発生する一日がある。
                             台風とは言わなくても低気圧の規模からいえば、
                  台風と何ら変わりがない・・・。
                               南の海から来ないから台風とは言わないのだろう。
                          しかし、この春の台風には雷が付いてくる。
                        冷たい空気と暖かい空気がぶつかると、
                     ものすごいエネルギーが発生して、
               不気味な雷が鳴り出す。
                        人間の一番不安なのは感電することだ。
                      パソコンがダメになる可能性もある。
                       それでもまだ人間は鈍いほうかな・・・。
              野外型のネコとなると、
              いっせいに耳が立って、
                    雷が光る瞬間を待ち構えている。
                        光った瞬間に自分の縄張りに一直線だ。
                             しっかり身を隠して眼だけ出してうかがっている。
                              人間だと光った瞬間立ち止まって空を見上げてる。
             急いで走ったところで、
                         一人の隠れ家などどこにもないからね・・・。








                 
京の新名所にも黄砂降る
                          中国の砂漠からの黄砂は年々ひどくなる。
                 しかもある大学の調査では、
                         工場排煙がいっしょに運ばれてくるそうだ。
                               花粉でも大変なところに黄砂も降り注いでくる・・・。
                            春がうきうきできた時代はいつまでだったのか、
                               今となっては春の声を聞くとどこでもブーイング・・・。
             当然といえば当然だ。
                                花粉情報の次に黄砂情報まで出てくる勢いであれば、
                    春はあけぼのようようにして・・・。
                         などというのんびりした風情はなくなって、
                             春はようようにして、涙とせきと鼻水、黄砂・・・。
                             1000年後の時代にはこれが古典になっていて、
                            はたして研究材料になっているのだろうか・・・。
          新名所といえば、
                                   だいたい若い恋人たちの待ち合わせ場所になることが多い。
                         待っている間はウキウキしているもんだが、
                     黄砂、花粉と降り注いできちゃうと、
                          あっちからもこっちからもジュルジュル鼻水、
                  ぶつぶつ言う声聞こえてきて、
                             一時代前とは違ったにぎやかさがありそうだ・・・。








主催者吟


春愁やマズルカ窓を開けて聴く

たんぽぽの綿毛を誘う旅の風

ひげそりの刃替え入学式の朝

散髪や寒さの緩む朝を待つ

雨降るやつぶれカップに散る桜






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