渡辺さんの俳句傑作選








5月の俳句






遠蛙やっと政令指定都市
                        地方にとってなかなか厳しい状況の昨今。
                  いくつかの市町村が合併して、
                     新しい市政を名乗るところが増えた。
                               収入源の拡大を目指すという意味合いもあるようだ。
                            しかし、そうなればかなりの議員が要らなくなる。
                               当然ながら議員のリストラをどうするかが問題になる。
                          4つもくっつけばまず半分の人数は要らない。
                           ほとんどくじ引き状態でやめていくことになる。
                           遠くで鳴く蛙のように一言恨み節でも吐いて、
                   気づくのが遅かった自分の首を、
         撫ぜている・・・。
                          そんなこんなやっとたどり着いた都市宣言・・・。
                                でも、蛙が遠くで鳴く土地の状況だと先はなかなか・・・。








遠き日の戦争ごっこ麦の秋
                    世界の戦争を「ごっこ」にするには、
                   どうしたらどうしたらいいだろう。
                         A陣地を守る兵隊にしっかる給料を出す。
                         B陣地を守る兵隊にも給料を同じ額だす。
                 それぞれに空砲を持たして、
                             弾に当たった時にどう倒れるかトレーニングする。
                                キャパの「くずれる兵士」の真似をしてもいいかも・・・。
                          血糊の貼り付け方の講義をみっちりこなす。
                             ブロードウェイのヘアメイクが適任かもしれない。
                             しかし、その兵隊たちの給料はどこが出す・・・?。
                            その戦争地帯を観光化すると地域全体が潤う。
                         平和ボケした日本人のおのぼりさんなんか、
                          結構、刺激的で喜んでいくかもしれない・・・。
                    日本語のガイドつきがいいだろう。
                                   地域が豊かに潤えば殺し合いなんか本気でするわけがない。
                            過ぎた殺し合いの戦争など神話の世界に入り、
                             戦争ごっこが観光の目玉になる日を近づけよう。
                         遺跡の観光など遺跡が崩れれば終わりだ。
                                 戦争ごっこの観光はもっと長持ちするかもしれない・・・。








オスゴリラ尻とんがって夏の雲
                 オスゴリラのお尻というのは、
              なぜかとんがっている。
                             それはそれでなんともユーモラスではあるのだが、
                    そのお尻がグッと突き出されると、
                   なんともいえない威圧感がある。
                      二連装のバズーカ砲のようにみえる。
                    縄張り荒らしの威嚇用なのだろう。
                        人間の男が威嚇するにはなんだろう・・・。
        ナイフか・・・。
                              しかし、ゴリラのようなユーモラスな雰囲気はない。
                                 ただ居て人間ほどユーモラスな雰囲気の皆無な動物も、
             少ないのではないか。
                                   ゴリラなど何もしなくてもなんかユーモラスな雰囲気がある。
                            キングコングなど人間が作り出した人間だから、
                   当然ユーモラスな雰囲気はない。
                   人間は角だしてとんがってるが、
                    ゴリラは尻出してとんがっている。
              この違いは遠いな・・・。









初燕ぐんぐん伸びるビルの丈

            ツバメが空を飛ぶ日。
                      日本列島梅雨に向かっているわけで、
             鬱陶しい日が続く・・・。
                         続きに続いて年末までそれほど変わらない。
                     日本でも過ごしやすい日というのは、
           極めて少なくなった。
              キリバス共和国のように、
                     無くなるわけじゃないだけいいか・・・。
               ただこれだけ土の下を堀り、
             くもの巣のようになった、
                       地下の上に立つ東京がどうなるか未定。
                       東京地盤沈下もありうる話になってきた。
                               地下だけじゃなく地上にも巨大タワーが建つという・・・。
                    上も下もどんどん深く高くなっていく。
                      日本は横がないわけだから当然か・・・。
               どうなるんだろう・・・???
                           行き当たりばったりでしかやっていけない人類は、
                 普通の動物となんら変わりなく、
                           徐々に滅亡していくしかないという学説がある。
          ほんとに思える・・・。








涼風やモデイリアニの女行く
                         モディリアニといえば瞳のない女増が特徴だ。
                    どこを見ているのか分からない・・・。
                  何も見ていないのかもしれない。
               見たくないのかも知れない。
                         モディリアニは生前はまったく無名で終わった。
                   画家として一世を風靡する人物を、
               目指さなかったわけではない。
                            強烈な自意識の中で成功することを目指していた。
           壮烈な挫折感の中で、
                 自分を見ていない人たちの目を、
           描いたのかもしれない。
             皮肉も自嘲も含めて・・・。
                今、猛暑の夏に向かう日本で、
                             一億総空疎にこの状況を受け入れなければならない。
            一億層丸ごとであれば、
                        当然この状況を誰も見てくれる人はいない。
                 回りの人が認識することもない。
             モディリアニ個人の状況が、
                        一億日本人の状況と一致するのが現代だ。






主催者吟


道場の気合やおぼろの月高し

雨けぶる山道に映えつつじかな

くもの巣や眩しさまして梅雨はしり

俳句誌を枕に寝入る梅雨の雨

草むしり軍手に止まる綿毛かな





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