渡辺さんの俳句傑作選
7月の俳句
十薬やカーペンターズ口ずさむ
どくだみと聞くと思わず苦い味が口に広がる。
きれいだとかそういう系統の形容詞はまず出てこない。
まあ、漢方薬では結構えらい地位にある草だが、
どうもその地面にある時から臭いのがいまいちだ。
結構じめっとしたところに群生していて、
花の真ん中から煙突のようなめしべが出ている。
勢いのある花だというのはなんとなく納得する。
漢方としてはおなかに効くという話だ。
じっと見つめて飲むのはなんだか厳しいものがある。
しかし、効くとなると飲まなければならない!!
気をそらすにはやはり明るく軽めの音楽がいい・・・。
これでベートーベンじゃとても言葉にならない・・・。
カーペンターズを軽くひねって一気に飲み干す。
これだろうな・・・。
二つ目の万歩計つけ夏の雲
メタボという言葉がマスコミに出てから、
自分が太ってるのか標準なのかが、
お風呂に入るたびのいまや標準テーマになっている。
太っているか痩せているかはまあない・・・。
メタボという言葉が気になってる自分に、
痩せてるという認識があるはずがない。
ボケっとして頭を軽くしたいお風呂がこの言葉の登場で、
なんだかいまいち引っかかりができてしまった・・・。
歩くということが基本で歩数が重要らしい。
万歩計を常につけての日々だが、
メタボなんか気にして気にしてない日常を過ごしているうちに、
紛失!!
紛失すると不安になるから今や二つ目の万歩計。
猛暑の中、歩数をなんとか稼ごうという、
涙ながらの努力が続いている・・・。
風薫るUFOキャッチャーうまい奴
UFOキャッチャーというゲームがある。
透明の箱の中のアームを操作して、
ぬいぐるみとかいろいろとって来るあれだ。
このゲームほど取れるやつと取れないやつの差が、
はっきりするゲームも少ない。
ほかにもあるのかもしれないが、
一番痛切に感じたのがこのゲームだ。
まだこのゲームでまともに何かを取った経験がない・・・。
ところが見ていると次々にゲットするのがいる。
この差がなんとなくコンプレックスな気分にさせたりする。
たかがゲームどうでもいいと思うのだが・・・。
まあ、人間ができてないってことだろう・・・。
風がさわやかだったりするときは、
あまり近づきたくないね・・・。
ま、遠目で通り過ぎるのがいいだろう。
雄弁な窓際どうし冷奴
そろそろ退職の機運が高まってくると、
なんとなく仕事が遠ざかっていくような気がする。
そんなことはだいたい気のせいなことが多い。
ただ、いきなり机が窓際に設定されたりすると、
いやにリアリティーを感じたりする。
一人でその場所にいるときは、
それでも緊張感は維持できる。
しかし、会社というのはだいたい同じ境遇の方が、
必ず一人や二人いたりする・・・。
またそれが格別の配慮かどうかわからないが、
いきなりある日、隣に机がきたりする。
最初は一言三言、儀礼的に言葉を交わし、
お互いが同じ境遇にいることがはっきりすると、
もう会社の経営から上司のことまで、
今まで硬く封印していた事柄を、
理路整然とお互いとめどなくまくし立てたりする。
結局、舌鋒鋭く迫ったところで、
豆腐にくぎ刺すようなもんだけど・・・。
住職の法事の言葉夏座敷
お盆がそろそろという季節になってきた。
お盆の時というのは全国的に暑い!!
温暖化が進んできた日本では、
夏は猛暑という表現に変わっている。
ようするに耐えられない暑さということだが、
耐えられない中で数カ月、
日本人は生活しなければならいということだ。
温暖化を何とかしますという政治家も、
同じ状況の中で生活している割には、
涼しそうなのはなぜか・・・。
本当は暑いのだが国民に我慢しろよ、
というメッセージがこもってるのかもしれない。
最近のお盆に来るお坊さんの中には、
貸し切りのタクシーで乗り付けることも多いようだ。
クーラーの利いた車から降りてきて、
扇子でパタパタしたあと、
ありがたい講話など話しだす。
お経は若干年々短くなるような気がしないでもない。
まあまあ、猛暑となれば仏もなにも暑いわけだから・・・。
短めに聞くのがいいのかもしれない。
主催者吟
蝉しぐれ激しく雨と競いけり
葉に4ツつぶれて下がるセミの殻
兄の咳父に似たりと盆の夕
雲の峯いよいよ太く山黒し
アスファルト鈍く光りて日傘行く
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