渡辺さんの俳句傑作選








11月の俳句







ジェラシーのはみだす老女曼珠沙崋
                     日本の人口比が高齢化して久しい。
                     100歳が万の位にまで増えている。
                               これが女性に偏っているのが何とも悔しい気もする。
                  男はやはり単に消耗品か・・・。
                       女性の色気の寿命もだいぶ長くなった。
                            60代でも30代に対抗心を燃やしているそうだ。
                         かつらから化粧品までとにかく揃っている。
                        それに比べると男性は40歳も過ぎれば、
             あらかた終わっている。
                 これもさみしいかぎりだ・・・。
                              対抗心が高じてくると塗りが厚くなってくるそうだ。
                            さらに勢いがついてくるとなんと顔の輪郭から、
                                わずかにはみ出してしまっていることがあるという・・・。
                   そういう話を聞いたことがある。
                            いやはや対抗心というのはなんとも恐ろしい。
                               自分から言いふらす勇気はとても持てない話だ・・・。








   鰯雲ビル屋上の養蜂場
                 秋も深まって空も高くなって、
             見上げると鰯雲・・・。
          空だけ見てると、
                        なんとも清々しい秋の冷気が心地よい。
                    そのまま秋を感じて目をつぶって、
                  なんてわけにはいかない・・・。
                       何しろ回りはビルに囲まれているのだ。
                  今の日本、行けども行けども、
                     建造物が途切れることはまずない。
                           建築列島と言ったほうがいかもしれない・・・。
                              こんな日本にまだ養蜂という仕事があったのかと、
                  思わず身を乗り出してしまう。
                            まあ、高いビルの屋上に養蜂箱を設置すれば、
                         とりあえず四方自由に蜂は飛んでいける。
                     この不況で空きビルが多いと聞く。
                        どうせなら屋上を養蜂業に貸し出せば、
              結構いいかもしれない。
                    サプリメントがはやる昨今だ・・・。








うつ病に一度もなれず草の花
                    神経を病む人が増えているという。
              企業によって会社内に、
                              心療内科の部屋も設けているところがあるという。
                         そこがいつも人が切れることがないという。
                                  しかし、こういう部屋に医師と看護婦を常駐させるのは、
               お金のかかることだろう。
                   節約というならこういう部屋を、
                      無用にするように考えたらどうだろう。
                        年間にすればかなりの節約になると思う。
                   しかし、こういうことをいうのは、
                     神経症の時代に乗り遅れた人間の、
                    やっかみ的提案なんだろうな・・・。
               これはいいことなのか・・・。
                          いや、とりあえず久しぶりに会った友人には、
                     神経がまいっている顔で表現したい。
                        脂ぎって艶々してちゃだめだということだ。
                        時代の要求に合っていなわけだから・・・。








鶴亀算幾度も解く秋の夜

                   春といえば、ひねもすのたり・・・。
                 秋といえば、灯火親しむ・・・。
                         まことに日本の四季のありがたいところだ。
                         四季それぞれの季節に固有の表現がある。
                                これは日本という国に住んでの得点じゃないだろうか。
                             日本人の細やかな感性はここではぐくまれる・・・。
                                     なんていうのはだいぶ時代が下がった日本人の感じるところで、
                        今はもうほとんど春も秋も薄口でしかなく、
                   お隣の国でミサイルをぶっ放せば、
           ゲリラ雷雨とかいう、
                             かつての日本人が知らなかった季節感が到来する。
                                今の時代に灯火親しむなどという風情は合わないのだ。
                     鶴亀算というのも今の子供たちには,
               レトロな響きかもしれない。
                              下手に口にするといきなり過去の人になりかねない。
                           鶴亀算を秋の夜長にフト解いてみるというのも、
                                      人口構成比の一番大きいところ住まう人の教養じゃないかと・・・。
                                 書きながらその仲間入りをしていることにぎょっ!とする。









高齢者ジムでひねもす文化の日
                           日本の高齢者比率は世界一になりつつある。
                 すでに世界一なのかな・・・。
                             食に豊かな国、日本の商標のようになっている、
     「メタボ」
                                   この言葉の響きと健康ブームは一体になって発展してきた。
                           子供から大人まで幅広く分布している言葉だ。
             外で遊べない国では、
                                子供からスポーツクラブに行かないと運動が出来ない。
                          年齢が上がってくるとジムに通うというのが、
                   ほとんど義務のようになっている。
          動かないとメタボ。
        動くと過労死。
                       これでは一体いつ体を鍛えるのか・・・。
                           生まれて自由になるまでのサバイバルレースを
                         なんとか潜り抜けた高齢者になってからだ。
                   高齢者になったらじっくり鍛える。
                     鍛え上げてからはかなり長くいける。
                        100歳が万の位になるのは当然か・・・。








主催者吟


雨の朝車内の匂いに冬きたる

紅葉もゆ雨降る底の部落かな

降りしきる雨に紅葉の散り尽くす

踏む足をやさしく受けし落ち葉かな

音も無く闇の湧きたる山の秋




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