渡辺さんの俳句傑作選
12月の俳句
我もまた絶滅危惧種日記買う
現代日本の中高年が、
不況になるとリストラの対象になる。
その昔、歳を取って働けなくなり、
食べるだけになってしまうと、
山に捨てられた・・・。
映画では「楢山節考」として、
昭和の名優「緒方拳」の代表作にもなっている。
昔の平均年齢を考えると、
今の中高年くらいだろうか・・・。
その感覚でいくとリストラされても不思議はない・・・。
小泉改革の中での大不況から5年。
再び100年に一度の大不況・・・。
不況呼び方も大きくなってきた。
希望退職者リストに中高年はかなりの割合だろう。
この呼び名が大げさになっていく不況をあと何度かくぐると、
いよいよ中高年の絶滅ということにもなりかねない。
人類における絶滅危惧種になりかねない。
特殊な保護種になりかねない。
自分史は早めに付けていったほうがよさそうだ・・・。
正月の猫美しき四畳半
2009年は大不況の年と、
どこのメディアでも連呼している。
そういわれると少し前まで、
余裕があると思っていた財布が、
いきなり寂しく感じられるようになる。
中身はいつもの通り月末寂しいくらいでだ。
いつもと同じに見えなくなるから不思議だ。
初詣の屋台に招き猫が売っていると、
去年は存在もたいして覚えてないのに、
今年はわざわざ探して見に行く・・・。
なんと自分でも驚いたことに、
ひとつひとつ品定めまで始める。
右手と左手と上げてるほうで意味が違う・・・。
そんな説明もしっかり聞いて、
中間の大きさの招き猫を買ってしまう。
去年まで何もなかった部屋に、
いきなり招き猫が座った。
招き猫を置いたところが、
丸く空気がきれいに見える。
不況の連呼は恐ろしい経済効果をもたらす・・・。
G線にすんなり宿る淑気かな
晩秋が過ぎ冬に突入・・・。
早朝、日の出がめっきり遅くなって、
日が暮れるのは一段と早い・・・。
秋という季節ですっかり意気消沈まで、
いかないところで静かになった気分・・・。
若いと気分が静かになった感じがする、
ところで冬も終わってしまう・・・。
年も重ねてくると、
冬が終わる前に完全に気分は静まってしまう。
寒さで身も心もというのが実感としてくるわけだ。
少し前までエレキの音に敏感に反応していたはずが、
ヴィオロンのこする音に簡単に反応してしまう・・・。
自分以外誰もいない気分になるのが怖い・・・。
何事に対しても、
「淑」とした気分になるのもこのあたりからか・・・。
錆びついた自転車こいで冬満月
自転車というと子供のころは、
主要な交通機関だったことを思い出す・・・。
都内はまだしも少し区部を出ると、
まだまだ舗装もしていない道が、
学校、特に中高は続いており、
雨の日も風の日も雪の日も暑くても寒くても、
富士山が見えようと見えまいと、
毎日ペダルをこいで通う・・・。
親たちも車なんて高値のそのまた上の花・・・。
みんなでペダルをこいでいた。
「青い山脈」的世界だったわけだ
ちょっと土地が広いと、
自転車置き場を経営する人も、
主要駅の回りには結構いたと思う。
いまや時は不況を何度も潜り抜けながらも、
各家一台は車の時代。
久しぶりにペダルをこぐといきなりまっすぐ走れない・・・。
こぎ手が錆びついているということた・・・。
世上には七人の敵注連(シメ)飾る
人間生まれ落ちて、
オギャアと声を上げたとたんに七人の敵がいるという。
なんだか分からない時から戦う運命にあるのが、
人間という動物だ。
特にほかの動物を考える時、
特に驚くにも当たらないのだが、
ほかの動物は生まれてから、
その場で命のやり取りになる。
人間はそこまで極端ではない・・・。
しかし、超ずるに及んでは、
これはなかなか厳しい現実であり、
七人の敵を意識して、
日々これをかわしていかなければならない。
命のやり取りまでいかなぶん複雑怪奇だ。
正月には注連縄を張って少なくとも、
一年出来るだけ近づかせないように、
防御壁を作りたいところだ・・・。
大人の感性でも甲斐無いと思えないところが、
真実味がある・・・。
主催者吟
ドント焼き炎に並ぶ赤き顔
頂上にへり軽々と冬日かな
薪燃ゆる匂いに遠き冬の山
茅屋根に湯気立つ冬のぬくむ朝
鹿討ちのカチャりと乾く銃の音
電球に湯気柔らかき雪の宿
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