渡辺さんの俳句傑作選
2009年 2月の俳句
木の芽風回転ドアのきしむ音
春一番、春二番・・・。
風が強くなると呼び名がつく。
春というい季節は、
勢いのある季節だいつも思う。
植物も次々芽吹いてくる。
花粉が飛ぶ前は人間も血の回りが良くなり、
元気が出てくる季節だった。
今や花粉が飛び黄砂が降れば、
人間の気分は最低を記録する。
これは日本人のご機嫌度が、
いかに下がってしまったかの典型だろう。
日本の四季でご機嫌度の最も高くなる季節が春。
そこから冬に向かってご機嫌度は下がり続けていく・・。
しかし、いまや日本人のご機嫌度の上がる季節はなくなり、
一年中気分は低空飛行だ。
神経を病む輩が増えるのは当然となる。
一つドラエもんの回転ドアを各家に設置して、
ご機嫌の春に、
行って帰ってこられるようにしてみたらどうだろうか・・・。
ドアのきしむ音がうるさくて、
今度はそれがご機嫌度を下げる原因になるのかな・・・。
春寒し壁のピカソを傾がせる
春もいよいよ本番といわれながら、
結構寒い日というのがある。
ピカソにはなんとも暗い、
青の時代という一連の絵がある。
青が基調になっていてだれが見ても寒々しい・・・。
本物のピカソの絵を壁に飾るなんてことは普通できない。
絵画展で買ってきたようなプリントを飾るわけだが、
ピカソの後期のにぎやかなわけ分からない絵を、
自室に飾るのも一つと思うが、
長い間見ているとなんだか気分が、
お祭り騒ぎになりっぱなし、
ということもありうるわけで・・・。
今年の春の不況風の強さを考えると、
青の時代の絵をかけて、
平たい気分にして腕組がいいかも・・・。
しかし、春もあまり首の回りが寒いと、
体をかたむけたまま見るようになりそうだ・・・。
啓蟄やジーンズはいて臍ピアス
冬眠していた動物が外には出してくる季節。
若者の肌の冬眠もほどけて露出度が高くなる。
一定の年齢になると冬眠しっぱなしになるから、
若者という時期はやはり貴重だ。
秋から冬にかけて厚い服で、
冬眠状態になった全身の肌は、
春とともに腕足から露出度を高めていく。
お腹まで冬眠から覚めると、
ジーンズもお尻くらいまで下がる。
ここまで来るとお目覚めの確認がつけられる。
思わず目がいく臍ピアスだ。
眺めるおじさんたちもここからお目覚めかも・・・。
早春の苦吟しているホームレス
ホームレスの増加という連日のニュースが、
今の世の中の状況をよく表現している。
ホームレスにも二つの流れがあって、
社会復帰を強く希望しながらホームレスを続けている派・・・。
ホームレス生活にドップリつかってしまっていて、
坊主と乞食は三日やったら…の派・・・。
どっちにしても見た目は何も変わらない。
また、流れの中には無頼派と、
良識派の二つの流れがあるらしい・・・。
これも外から見たらなんにも変らない。
これからホームレスの社会も人口密度が高くなって、
住みにくくなるという話だ。
そういう殺伐としてくるホームレスの中では、
俳句を作るのがいいと思う。
ホームレスの生活というのは、
実は俳諧にはもってこいの環境なのだ。
仕事をコツコツしてようだと俳諧の傑作は生まれにくい・・・。
一番芸術的生活をしているのが、
実はホームレスたちなのだ・・・。
春の闇送信メール削除する
メールというのはだいたい管理がいい加減となりやすい。
送ると送りっぱなしで、
ほとんど読みなおしなんてことも省略してしまう。
あとから内容について質問されたりすると、
全く覚えていないなんてことが結構ある。
自分だけのパソコンに向かってのことだから、
誰も見やしないという、
根拠のない日常の意識があるのだ。
しかし、だれも見ていないという、
確実な根拠を示せる人はまずいない。
ようするにパソコンを閉じてしまえば、
それですべてが封印されたと決めつけているわけだ。
いきなりなんとも色っぽいメールを送ることがあったりすると、
そこでいきなり目覚めたりする。
慌てて過去のメールを読みなおしたりする。
そんなもの全部読みなおせるわけがないから、
そこでようやく削除が始まる・・・。
春一番が吹くとそんなこともあるのかもしれない・・・。
主催者吟
咲いて見せ落ちても見せる椿かな
水仙や口開け笑うそろり風
一夜明け半ば咲きたる桜かな
伸びをする五臓六腑に春の風
すべて終え炬燵に入りてまた用事
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