渡辺さんの俳句傑作選
2009年 4月の俳句
天向かうスカイツリーや春暑し
東京タワーを追い越すタワーが作られつつある。
東京タワーができたときは大騒ぎだったが、
今回のは存在も知らない人も多い。
天に向かってのという建物も珍しくもなく、
たいした関心ももたれないということだ。
天に向かってというのは、
バベルの塔の時代にもあったようだ。
ただ神の怒りをかって、
崩壊させられてしまったらしい・・・。
このツリーの運命はどうなるだろう・・・。
バベルの塔のように神に崩壊させられるだろうか・・・。
いや、見上げるだけで鬱陶しいこの塔は、
心理的には崩壊させられてるんじゃないだろうか・・・。
春興や車内でパンを食う女
戦後何が一番変わったかという話がよくある。
いろいろな方面からいろいろなものが出てくる。
それぞれそうかなと思わせるものも多い・・・。
日本で一番変わったといえるのは、
女性の意識だろう・・・。
強くなったということもよく聞くが、
そんなことじゃない・・・。
女性は太古の昔から強いことに変わりがない。
何が変わったか・・・。
意識が変わったということだ。
関係なければお構いなしという意識の成長だ。
そもそもそれは女性のいい持分だった・・・。
しかし、何事も方法論が崩れると、
悪いほうへ傾く法則がこれにも生きている。
タバコの投げ捨て、電車の中の化粧、
電車の中で平気で大口を開けてパンを食う・・・。
人間のいい持分も、
方法論が崩れるとろくな使い方をされない。
そういう意味でもっと大きくいえば、
戦争が一番いい例だろう・・・。
健脚と健啖の翁柏餅
日本の高齢化は世界一。
そして健康志向も思考もすばらしいレベルだ。
登山に行けばすれ違う人のほぼすべて、
中年以上の男女の方たちだ。
こちらが一番若いくらいになってしまう・・・。
足の速さもとても追いつけないレベルだ。
話し声もこれまた若い連中ほど声が小さい・・・。
おじさん、叔母さんレベルになると、
山の頂上のどこにいても聞こえる大きさだ。
頂上の端と端で会話ができる・・・。
これはすばらしい・・・。
これより先、連休も柏餅も、
高齢長寿を祝うという意味に、
変わっていくのかもしれない・・・。
風薫るエスペラント語の誘いうけ
冬の寒さが終わって・・・、
今年はなかなか終わらない寒さではあったが・・・。
春の日差しが天に満る時、
人間の気分はやわらかくなり、
話に笑顔が戻ってくる・・・。
寒いときの話というのは、
結論が早くて味わいが足りない。
だから春という言葉は、
明るいイメージなんだと思う。
しかし、花粉症が蔓延してくると、
春の会話が鬱陶しく変わってしまった。
話が鼻水の話ばかりじゃ明るい会話も難しい・・・。
しかし、気分が開放的になるのは変わらずで、
誘われるとついその気になるのも、
この時期が一番多いようだ・・・。
いまや忘れられていてなおしぶとく残っている、
世界共通語の誘いにおめでたくもノルのも、
この時期だけの話かもしれない・・・。
水温む二ート集めた座談会
この不況は100年に一度といわれている。
総理自ら触れ回っている言葉だが、
国民心理を脅すにはちょうどいいかもしれない・・・。
その言葉に乗って人きりが公然と行われるのも事実。
職場を切られた人がいるのは今の現象だろう・・・。
しかし、最初から仕事に就かない若い連中は、
今発生したものでもない・・・。
いまどきの座談会には必ず紛れ込んで、
一番発言したりしている。
そもそも仕事をしていないわけだから、
不況失業についても元気のいい発言が多い・・・。
今年の春先はニートといわれる連中の、
発言が最も注目された時期かもしれない・・・。
経済好調のときは敵役で、
不況のときは花形になる役回りだ・・・。
主催者吟
ホームレスカラスと競り合う花見後
化粧香でぼけるケーキや春霞
春光や雨より傘の花増えて
鉢に立つ鯉のぼり揺れツツジ咲く
客を待つ車夫の刺青ボケの花
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