渡辺さんの俳句傑作選








2009年 7月の俳句







ちびた筆捨てずにしまう終戦日
              8月15日、終戦の日。
                日本人にとって特別の日、
                 という思い込みがある日だ。
                            しかし、人口の大多数が戦争を知らない世代。
                            終戦の日だけやたら集中的に放送される特番。
                             果たしてどれほどの人が足を止めるだろうか・・・。
                             見るものがないとチャンネルを切ってしまう層が、
                  多くなってるのではないか・・・。
                忘れるのが人間であれば、
                                 戦争の悲惨さも話の中の出来事でしかなくなるわけだ。
                     昭和の時代が遠くなりつつある中、
                          もったいないの精神も過去になりつつある。
                        今やそんなことを言う若者も少ない・・・。
                    せめてちびて捨てるだけの鉛筆を、
                       大切にすることだけを子供たちの前で、
                   実行してみたらどうだろうか・・・。








戦争ごっこ死語になりたる終戦日
              今の時代の子供たちが、
                       戦争ごっこという遊びをしている話は、
              まったく聞かなくなった。
                           子供同士群れて遊ぶという世界がないのだ。
                少子化が影響してるのか、
                    子供のうちからやることが多くて、
                   外でみんなと遊ぶということが、
                できなくなっているのか・・・。
                            とにかく子供の集団というのは見ることがない。
                          子供の世界に戦争ごっこという遊び自体が、
               存在できなくなっている。
                       これはいいことなのかどうなのか・・・。
                       戦争ごっこを通して戦争を考えていく、
                    というプロセスもなくなるわけだ。
                     戦争というものが身近から消えて、
                      どういうものかもわからなくなる・・・。
                         要するに戦争というものに鈍感になって、
                   いつの間にかいつか来た道を、
                      みんなで歩くことになるのだろう・・・。









矯正をしてる乙女や百日紅
                         中学生、高校生が歯の矯正をしてるのが、
                  当たり前のようになっている。
               それがどうしたといって、
                          普通の現象と慣れてしまえばなんでもない。
                            しかし、百日紅のピンク色の花が咲き誇る夏。
                  白と黒の制服姿の女学生は、
                  やはり清楚雰囲気に見える。
                   今の時代清楚なという言葉が、
                         当てはまるかどうかかなり疑問だが・・・。
                   男にはそう見てしまう感性が、
                 どこかに眠っているもんだ。
                     その感覚がパッと刺激された時に、
                        強制してる歯がワッと目に入ってくると、
                 百日紅の花が一気に散る、
               空気感に包まれるのだ。








陸奥の別嬪の海女雲の峰

                 海岸で何人かの海女さんが、
                           海に潜ってはたらいに何かを入れている・・・。
                    特に話声が聞こえるわけでもなく、
                   繰り返し潜っては浮かんでくる。
                    若い海女さんから年配の方まで、
             けっこうな大漁だ・・・。
                 こういう岩場のあるところで、
                      海の青さの中で見る若い海女さんは、
                    色気を発散するに十分な状況だ。
                      声をかけようとして一瞬息をのむ・・・。
           顔を上げた先には、
               夏の空の親分入道雲が、
                  空高くゆっくり上がっていく・・・。
                           日常から離れた場所の特別な情景はこちらで、
                              海女さんたちにとっては普通の日常なのだろう・・・。








名城と市電の町や雲の峰
                           戦国時代から残る城は全国でもそうはない。
                              そういう城は国宝といことに相場は決まっている。
                    石垣に乗るその豪壮な天主閣は、
           なかなかの迫力だ。
                だいたいその城の回りは、
                  城下町の風情が残っていて、
                いきなり空気が違う・・・。
                       感覚が兵どもに自分が混じるような、
                          それまでとは違った気分に支配される・・・。
              それがいいのだ・・・!!
                    江戸時代までの空気感のなかで、
                    違った感覚を楽しむことができる。
                 そこに市電が通りかかると、
                  明治大正の空気感が流れる。
                      時代の代わりの中で気分をよくして、
                           そしてJRの駅で今の時代の空気感に戻って、
             その暑さに辟易する。
                    城のある町はだから面白い・・・。






主催者吟


人消えて提灯ばかり風に揺れ

炎天の日陰に犬の大あくび

揺れる稲向いてる先の駒ケ岳

足元を冨士までつなぐ雲の海

雷や小屋の寝息と混じりけり




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