渡辺さんの俳句傑作選








2009年 8月の俳句







万緑や我にもありし家出歴
                    どこを見ても緑いっぱいの季節。
                     日差しが厳しい季節ではあっても、
                        回りが緑に囲まれてる状況というのは、
                  生命力を感じることができる。
                       しかし、自然の生命力を感じることが、
                            自分の命の力にプラスになるとは限らない・・・。
                          ここが人間のなんとも単純でないところだ。
                          厳しい日差しの中での活動は人間にとって、
                            遊びだと元気になるが仕事だとマイナスになる。
                       その状況で回りに生命が充ち溢れると、
                               それを受け止める空きの容量がなくなってしまう・・・。
                     誰にでもありそうな心理状態だが、
                    これを実行に移すかどうかだろう。
                   家に帰りたくない心理状況・・・。
           実行に移すと履歴。
                        踏みとどまると思い出ってことだろう・・・。








夏空と数千人の太極拳
           夏の晴れ渡った空。
               健康ブームはいまだ健在。
                特に後期高齢者なんとか、
                   などという法律ができてからは、
                              健康であることが夫婦円満のもとともなる状況だ。
                       中高年の登山ブームまたジム通い・・・。
                               とにかく健康という文字が冠にかぶさったものには、
               中高年がどっ!と集まる。
                         お隣中国では太古の昔からいろいろある。
               特に太極拳は歴史が古く、
                   高齢者にも優しい動きが人気だ。
                               ただ日本との違いはなんといっても参加する人数だ。
         一億と十億・・・。
                     日本で百人参加するということだと、
            中国では軽く千人だ。
           百人だとヘリ規模。
                       千人単位になってくると宇宙船規模だ。
                     上空から眺めるということではだ・・・。
                         まず大陸と島の違いはここでも顕著だ・・・。








猫入れて川の字になる昼寝かな
               お盆時期の猛暑になると、
                              夜の寝苦しいこと地獄の横丁を歩くがごとくだ・・・。
                      当然ながら睡眠不足となるわけだが、
                      これを解消するにはやはり昼寝だろう。
           お昼を食べて午後。
                     ちょっとクーラーを利かせて横になる。
                これで寝不足も解消となる。
                      ここで家族全員といきたいところだが、
                              若い連中はイベント昼寝などに参加するわけがない。
                                  子供の小さいころは子供を真ん中に寝かせて仲良く熟睡。
                                夫婦二人になるとどうも間に何かないと落ち着かない。
                        もう子供がってわけにはいかないのだ・・・。
                         仕方なく飼い猫を間に寝かせて形を整える。
                      ちょうどいい夫婦の距離感が生まれて、
                       しかも猫という壁ができることによって、
                      それぞれの空間にさらに安定感が増す。
                     ここで熟睡昼寝タイムが確保される。








羞恥心もれる少女のサングラス

                              今や夏になると紫外線情報というものが流される。
                       地球を取り巻くオゾン層が破壊されて、
                                地上に届く紫外線の量が桁違いに増えているそうだ。
                           紫外線は皮膚によくないことももちろんだが、
                               目にもかなりの悪影響を及ぼすことが分かっている。
                           サングラスをかけて歩く人の数も増えている。
                            サングラスで紫外線をカットしようということだ。
                           街中をサングラスをかけて歩く姿というのは、
                      その筋のものと決まっていたのだが、
                    今や一般化してしまっている・・・。
                               若い女の子でもサングラスという姿が目立ってきた。
                                若干の恥ずかしさをのぞかせるところがかわいい・・・。
                            ほんとにサングラスをして街中を歩きたいのは、
                     自民党の連中じゃないかと思う・・・。
                       図々しい羞恥心を若干見せながら・・・。








まんまるの老女の背中蝉時雨
                    人間は歳と共にいろんなところが、
                  いろんな形に変化してくる・・・。
                   ま、全体的に下にさがってくる。
                      万有引力に素直になるということだ。
                 人間というのは20歳ころに、
                   一番引力に逆らうことができて、
                         徐々に引力に飼いならされていくものだ。
                           自分を鏡に写して見るとその違いは顕著だ。
                        口元から目尻まで下がってきている・・・。
                      これだけ引力に押さえつけられると、
                           まあ、流れに逆らうこともできなくなるわけだ。
                  さらに年齢が上がってくれば、
                        腰も曲がってきて背中も丸くなってくる。
          ここまで来ると、
                           ほとんど地球にお辞儀をしてるようなものだ。
                 ま、地球に帰る時のために、
                         挨拶しながら生活してるようなものだろう。
                         最後はセミとの同居になるわけだから・・・。







主催者吟


ほの暗き墓地にも色どり彼岸花

秋深し寝酒の度数を上げてみる

稲の海果ての甲斐駒仁王立ち

居眠りし母子の目覚め秋の風

雨流る窓にわが顔止まる虫




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