渡辺さんの俳句傑作選








2009年 10月の俳句







婚活の話の合間秋の蝉
                       最近頻繁に婚活という言葉をよく聞く。
                   結婚をしようという意志の元に、
                               結婚式をゴールに設定して活動する事を指すらしい。
               考えてみるまでもないが、
                     日本の人口の半分づつは男と女。
                       人一昔前までは婚活などという言葉は、
          存在しなかった。
                           ちょっと昔の人にこの言葉の意味を聞いても、
                     まったく通じることはないだろう・・・。
                        なぜこのような言葉出現したかというと、
          個人主義の蔓延、
               価値観のとめどない拡大。
                      これだけ無制限に価値観が広がれば、
                         お互いマッチする相手とめぐり合うまでは、
                    宝くじ並みの確立になりかねない。
          とまれ今は秋・・・。
                      ブライダルソングの合間のざわめきも、
                 せみのごとくに騒がしい・・・。








秋晴れや地には三菱壱号館
                        今秋は気温が焦点になる季節となった。
                           とにかく一日にして10度の変化は当たり前。
                    秋という季節を挟んで夏と冬が、
                           互いににらみ合って綱引きをしている感じだ。
                           どちらかが優勢になるたびにひきづられる、
                   われわれ人類は体力の限界を、
                 試されているようなものだ。
                                 その人類が秋という夏と冬が拮抗して出現する季節に、
                                三菱壱号館という商業ビルを復活させようとしている。
                           秋という芸術の季節に復活するせいなのか、
               美術館となるようだ・・・。
                     合間の季節を有効にしようという、
                        試みのひとつであることは確かなようだ。








裕次郎と思しき人や霧の街
                       石原裕次郎といえば昭和の大スター。
                   寂びの聞いた声、長い足・・・。
                    歩いてるだけで絵になるスターだ。
                      その世代には忘れられないスターだ。
                         その裕次郎が歩いてさまになる雰囲気は、
              やはり霧の街かな・・・。
                              イメージとしては共通項のひとつじゃないかと思う。
            季節がら駅を降りて、
            夜霧の中を歩くとき、
                           後姿が似ていると思える人はやはりいる・・・。
                    そういう人はさまになるわけだが、
                              自分の後姿を見た人がそう思う確立はゼロだ・・・。
                        だからスターって存在するんだと思う・・・。








鰯雲ハイブリッドで遠出かな

           高速道路1000円。
                  民主党になってただ・・・予定。
        エコカー減税。
                            車に乗る人にとっておいしい話がてんこ盛りだ。
                               これがどこまで続く話なのかはもちろん誰も知らない。
                                しかし、庶民にとっていい話であることは間違いない。
                      庶民の中に高速バスや船の人達って、
                  入っていなかっただろうか・・・。
               一番おいしくない部分を、
                    食べさせられると思われる人達だ。
                     秋の高い空に流れる鰯雲を追って、
                           高速道路を数珠繋ぎで走るハイブリットカーを、
                             なんとなくジトッと眺めてる人たちがいそうだ・・・。








臓器一つ取り換えたくて秋刀魚焼く
               ある程度の年齢になると、
                             それまで使い続けた体のどこかに軋みが出てくる。
                       40年、50年それ以上に使い続ければ、
                         まったく疲労しないということはありえない。
                                まあ、薬の一つや二つ持ち歩いていてもおかしくない。
                           みながみな同じ場所ということもありえないが、
                             故障気味のところはできればリニューアルしたい。
                                   日本ではまだまだ簡単に臓器をどうこうすることはできない。
                                 ある国ではお金さえ積めばなんとかなるような話もある。
                          実際お金を積んで事を運んだ例もあるようだ。
                       しかし、そう思っている大半は庶民だ。
                             庶民が手の届く金額で臓器を取り替えることなど、
                      やるほうも想定していないだろう・・・。
                             まあ、使い古してきた臓器もメンテナンスを施して、
                      できるだけ長く使用するしかない・・・。
                          秋秋刀魚がおいしいと感じていられる期間を、
                       できるだけ長く伸ばそうということだ・・・。






主催者吟


残り月黄葉の枝に遊びけり

昇る陽に紅葉徐々に燃ゆるなり

幾筋も夜露流るる星月夜

フッと止む晩秋の陽や遠き影

窓硝子朝露分けて一字書く




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