渡辺さんの俳句傑作選








2009年 11月の俳句







猫じゃらしトレモロ奏法ぎこちなく
                                クラシックギターの奏法にトレモロ奏法というのがある。
                                親指、薬指、中指、人差し指の順番で一本の弦を弾く。
                              とりあえず順番に弾けばいいということではあるが、
                             いざやってみるとこれば均等に弾くことが難しい。
                     ある意味これは当然のことであって、
                          指の長さはそれぞれ違うし指先の形も違う。
             爪の問題もある・・・。
                            これを同じ間隔でしっかり音を出すというのは、
                    かなりというか至難の業といえる。
                          うまく音の粒が揃うと絶大なる効果がある。
                    猫じゃらしの群落に風が渡るとき、
              一種爽快感がある・・・。
                                 その爽快感とよく似た感覚を感じることができる奏法だ。
                                 しかし、それにしてもなめらかに弾くのは大変なことだ。








色鳥や審美歯科より案内来る
                          歯についての問題が提起されてだいぶ経つ。
                      歯列矯正は今や常識化してきている。
                              それがもう一歩進んで歯をただ矯正するだけでなく、
                         きれいに見せようという方向になってきた。
                            歯というのは顔の中でいきなり色が違うものだ。
                        相手が笑えばいきなり目の前に露出する。
                                   それがまたその人の印象となってくるから怖いといえば怖い。
                              歯くそがついてるようじゃ話にならないということだ。
                       またいつ歯を磨いたかわからないような、
                  黄色い色もあまりうまくない・・・。
                           白い艶々した歯が目の前に現れるというのは、
                  面と向かったほうも気分が違う。
           世の中進んでくると、
                          歯もその人の印象の大きな一部となってくる。
                                  そこで審美歯科という歯の美容室みたいなものが出てくる。
                                    虫歯を治してるだけじゃ儲からないということなのかもしれない








一行はジャージすがたの秋遍路
                                お遍路さんも一時回ることがブームだったことがある。
                              八十八ヶ所を日がな歩いて一か月はかけて回る旅。
                         そのためのお遍路宿なる宿泊施設もある。
                 しかし、超忙しくなった現代。
             車を飛ばして回る人。
                観光バス回る団体さん・・・。
                        しみじみ丹念に歩いて回るということは、
            流行らなくなってきた。
                         八十八ヶ所を回って何が重要かというのが、
                      問題にならなくなったということだろう。
                         服装もお遍路装束というのがあるわけだが、
                     そこももうあまり重要性もなくなって、
                        ジャージ姿、ジーパン姿もいるという・・・。

             時代の流れというのは、
                        その行為の持つ意味もを変える力がある。









母さんのお古が似合う畑案山子

             畑に立つのは案山子。
                    イメージがこれだけ定着している。
                          いろいろな工夫を凝らした案山子があるが、
                         一番ポピュラーなのが「へのへのもへじ」顔。
                    来ているものも現代的な装束で、
                 けっこうしゃれていたりする。
                           まあ、ブランド物までは来てはいないと思うが、
                    昔の案山子のイメージからすると、
                           ただの案山子ではあっても小奇麗なのが多い。
                 しかし、畑に立つ案山子が、
                母親のお古だったりすると、
                        ジワッとした情感が湧いてくる気がする。
                          やはり大地に立つのは母親が似合うと思う。
                 食は母親が守ってくれるのだ。








老い果てし猫傍らに障子貼る
               日本の家にあるのは障子。
                          最も最近は障子を入れない家も多いと聞く。
                       一つには破れて張り替えが必要だから、
                 という理由があるらしい・・・。
                         いまはなかなかこういう手間をかけるのが、
                 億劫という若い人が多い・・・。
                              確かに追われるのが現代の生活の基調だとすれば、
                     障子の張り替えは時間の単なるロス、
                 ということになってしまう・・・。
                            ま、そう言わずに破れた障子は張り替えよう・・・。
                     日本の風景には障子貼りというのが、
               しっかり定番になっている。
                        置いた猫を傍らに日向ぼっこをさせながら、
                 障子紙を切る音を聞きながら、
                  日がな過ごすのも悪くはない・・・。







主催者吟

なにものぞ葉裏の卵銀杏散る

秋の陽に揺れる真中の女郎蜘蛛

スジ雲をいくつも越えてセスナかな

 秋時雨はるか山から差す陽かな

懐かしきは窓辺の君や秋の夕





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