渡辺さんの俳句傑作選








2010年 1月の俳句







湯豆腐や昭和に弱いやつばかり
                      冬の寒さを身に感じる時といえば鍋。
                  日本の冬の夜の寒さの中で、
                     鍋を真ん中に置いて囲んで食べる。
                     鍋の中でもシンプルなのが湯豆腐。
                            これは豆腐が主役で脇役も野菜がほとんどだ。
                   しかし、ぬくもり効果は抜群で、
                          食べ終わる頃には汗が出るくらいに温まる。
                          温まるほどに皆のおしゃべりも滑らかになり、
                  とどまるところを知らない・・・。
                              実はこれ、昭和の貧しき時代の冬の味覚でもある、
            昭和は貧しき時代と、
                        全国民中流という坂を駆け上った時代だ。
                      その昭和の下と上を語れる平成人は、
             すでにほぼいない・・・。








着ぶくれてゆっくり剥がすミルフイーユ
               最近東京にも雪が降った。
                          雪が降ると風が冷やされてとにかく寒い・・・。
             ちょっと外に出るにも、
                       重装備をしないと外に出る気がしない。
                           とにかく寒さを感じなくなるところまで着込む。
           それだけ着込めば、
                          丸々とした状態で出歩くことになるわけだが、
                  当然動きは超鈍くなるわけで、
                    腕を上にあげるだけでも重い・・・。
                         この状態でミルフィーユを食べるとなると、
                            とにかく落下させないようにしないといけない。
                           派手に落下させるようだと座り心地も最悪だ。
                 そうなることを防ぐには・・・、
                              映画の分解写真のように一つ一つゆっくり動かす。
                       神経をとがらせて目を集中させて・・・。
            食べ終わる頃には、
                          ぐったりしてること間違いなしの状態だ・・・。








軍団でマスク星人朝の駅
                  新型インフルエンザ流行から、
                           日本ではマスクが売り切れる状態が出現した。
                   道行く人のほとんどがマスク・・・。
                            知り合いとすれ違ってもお互い誰だか分らない。
                      日本中が無表情になった状態だ・・・。
               とにかく笑っても怒っても、
                    ようく目を見てないと分らない・・・。
                      怒ってるのを笑ってると解釈した時は、
               その場はどうなるのか・・・。
                   顔の3分の1がマスクで隠れると、
                     もう何人だかもはっきりしないだろう。
                  マスク星人来襲と考えたほうが、
                より気分的に素直になれる。
                   新型インフルエンザは日本人を、
             異星人に変えるという、
                       エネルギーを発揮していったようだ・・・。







婚活の裏話聞く冬座敷

                 最近の結婚事情というのは、
                少子化の影響があるのか、
                     それとも結婚に夢を持てないのか、
                          さもなければ相手が見つからないのか・・・。
                   とにかく独身が増え続けている。
                しかし、婚活という言葉が、
                     広くいきわたっているということは、
                           結婚願望が減ったというわけでもないようだ。
                          婚活とはどういうことがあるんだろうか・・・。
                             婚活などという言葉には縁のない世代にとって、
            興味津々ではある。
                  婚活の裏事情を寒い冬の日、
                  寒さも忘れて聞き入っている。
                       まあ、時間の経つのも忘れがちになる、
                      第三者には面白い話だと思う・・・。








冬ざれや父は九十路の同窓会
            今年の冬は寒い・・・。
                 結果的に暖冬化寒い冬かは、
                    過ぎてみないと分らないわけだが、
                          寒い冬の印象が強いのではなかろうか・・・。
                    そんな寒い冬に震えている最中に、
                      90歳の方たちの同窓会があるという。
                           この世代は暖冬などという言葉のない世代だ。
                         いまの冬はそれほど厳しい冬という感じは、
                持っていないかもしれない。
                              暖冬世代には冬に同窓会という発想はまず出ない。
                 話が出ただけですぐ却下・・・。
            寒い冬世代にとって、
                  いまの暖冬は90歳になっても、
                  活動期に感じるのだろうか・・・。
           こういうところにも、
                             隠れた世代間落差というのがあるのかもしれない。
                         見える所だけでは真の各世代間の違いって、
                   実はわからなのかもしれない・・・。








主催者吟

決意せる元日晴れて雲のなし

除夜の鐘蕎麦食う音にかき消され

賽銭を思わずのぞく初詣

走る子の息の白さや朝の月

水溜りの街を飛び去る冬ガラス





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