渡辺さんの俳句傑作選
2010年 11月の俳句
同じ本図らずも買う暮れの秋
本を買う・・・。
買ってすぐ読めば何事も起こらない。
確かにしっかり読んだ本は財産になっている。
しかし、人間そうもいかないときがある。
とりあえず買って、
その時はただその辺においてしまう・・・。
まあ、そのうち読もうというアレである。
しかし、だいたいそのまま忘れてしまうことがほとんど・・・。
そして秋・・・。
読書、芸術の秋だ・・・、
という気分になって同じ本が目に入る。
以前も興味を持って買っている本だから、
やはりそこでも買ってしまう。
歳とともにこのパーターンは増えていく・・・。
図らずもがどんどん増えていくわけだ。
ナンプレで一日過ごす文化の日
一年で一回だけある芸術をターゲットにした文化の日。
この日は文化、芸術に親しむ日と国が定めた休日だ。
音楽、絵画、その他もろもろ・・・。
しかし、そういう文化芸術に足を運ぶには、
なんだか疲れた気分が邪魔して足が前に出ない・・・。
そう・・・一歩が出ない状態で迎えるこの日。
そろそろ昼ごろ起きて、
秋の空を一瞥すると、
そこからは芸術を愛でる気分は出ない・・・。
結局誰気兼ねなく遊んでくれるゲームに向かう。
芸術ではないかもしれないが文化ではあるわけだ・・・。
文化の日の文化に浸っていることには間違いない。
激安の理髪店行き冬に入る
デフレの今の世の中。
高級住宅地と言われる街中にも、
激安の牛丼店が開店・・・。
そこが一番人気が出るという世の中。
500円の定食屋も開店。
とにかくどこまでいくかわからないデフレ・・・。
暮れのボーナスもここ年々少なくなっているという。
収入が減れば減っただけ安いところへ人は流れる。
そうすると店もよりやすくとなる。
全体が貧乏になる構図だ。
いわゆる安床もますます繁昌となる。
繁昌しても収入は増えないという情けなさ・・・。
デフレを象徴する一句ではありますな・・・。
小春日の我にもの言う家の猫
猫ほど自分の居場所を、
しっかり確保する動物もいないのかも・・・。
夏になれば涼しい場所を陽の動きとともに変えていく。
冬になれば日の当たる場所を移動しながら居眠り・・・。
そこのところは決して妥協しない・・・。
呼ぼうが何をしようが、
自分の行動パターンは崩さないのが猫だ。
冬の寒い日の陽だまり・・・。
人間様が座っていてもそこの場所はしっかり確保。
膝の上でもどこでも乗っかっても確保。
まず、妥協はない・・・。
冬のたまにある暖かな日・・・。
こちらを向いて「出かけてくるぜ!」と、
取り残される気分にさせるのもなかなかうまい・・・。
厨窓から竹馬の弾む声
料理をしている時というのは、
結構集中力が試されているときであり、
脳みその回路が一つに束ねられてしまっているだろう。
料理というのは意外なほど繊細なものであり、
その時によっても味が違ってくるものと言える。
精神的なものも大きく作用するということだろう。
そういうところで、
外部からの音が入ってくるとどうなるだろう。
当然一つにかたまっていた神経というのが、
少し緩むことになるわけだが、
そこでいったん途切れた神経を、
もう一度見直してよりよくなるのか、
そこで乱れて味を落とすのか、
この違いが同じことをやるにしても、
ここの人の違いといえるということだろう・・・。
主催者吟
また増える喪中はがきや年の暮れ
月冴えて今だ荒ぶるゲームかな
空蝉やもみじとともに落ちにけり
幾重もの枯れ葉踏みつつ冬の山
虫食いも侘びかさびか暮るる秋
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