渡辺さんの俳句傑作選







2011年 3月の俳句






寒紅や流行り作家のサイン会
                      作家にも時流に乗った作品を書いて、
                   芥川賞などに当たると当たると、
                  いきなり名前は全国区になる。
                          昔、参議院に全国区というのがあった時は、
                        小説家が立候補して当選したりしていた。
                             今は全国区というのがなくなったせいもあるのか、
                              作家が参議院に立候補というのはあまり聞かない。
                                作家から議員に転身組でメジャーなのが石原慎太郎。
                 もっとも作家で名前を売って、
                              書けなくなって議員という筋道だったとう話もある。
                            今はそんな作家もいなくなったということか・・・。
                 名前が売れて登場するのが、
               出版記念サイン会という、
                                えらく規模の小さいところに収まってしまうというのが、
                     当世人気作家ということだろう・・・。








スカイツリー正面に見て懐手
                      スカイツリーが東京タワーを抜いて、
                   なおも背丈を伸ばし続けている。
                       完成すれば世界一の高さになるという。
                                    大地震が来てはたして電力はどこまで使えるのだろうか・・・。
                             いきなり完成とともにライトアップないだろう・・・。
                        ま、そのあたりは若干寂しい気もするが、
                完成直前に正面に立って、
                そのてっぺんを見上げれば、
          気宇壮大となり、
               足を肩幅より少し開いて、
                     腕組みもしたくなるというもの・・・。
                              懐に手を入れれば明治の時代の壮士の気分・・・。
                     こういう気分にしてくれるだけでも、
                             今の日本人にはありがたい存在なんだろうな・・・。








異国人落とすマグロの競の市
                         世界で日本人が一番マグロを食べるそうだ。
                          寿司文化がこれほどまでに隆盛を極めれば、
            それも当然だろう・・・。
                        この寿司文化外人さんにも人気だという。
                       ヘルシーさが受けているという話もある。
               メタボな様子を見ていると、
                 それもなるほどという気もする。
                          でも、寿司文化がさかんだという日本人にも、
           メタボ問題論がある。
                           まあ、寿司文化でヘルシーだからということで、
                      メタボが少ないということもなさそうだ。
                                 しかし、寿司文化ヘルシー論を信奉する異人さんが競で、
                                マグロを競り落とそうとするのも分かるというものだ・・・。









おでん鍋父ふともらす軍歌かな

              冬の寒さも峠を越えて、
                    ポカポカ暖かい日も出てくる3月。
                それでも暖かい日が来れば、
                真冬並みの寒い日が来る。
                                  暖かいと寒いの間で右往左往するのが人間というわけだ。
                        右往左往するのが人間の性ではあるが、
                          この季節の中では自然の言うがままになる。
                                 逆らっても逆らえないところが人間界とは違うところ・・・。
                  寒さ身に染みる夜のおでん鍋。
             老父がふと漏らす軍歌。
                   逆らえない時の流れに流されて、
                    たどり着いた今目の前のおでん鍋。
          ホッとして緩んだ、
                             時空のつなぎ目から漏れてきたということだろう。








パソコンになにもかも詰め冬籠り
                   パソコンが個人のものとなって、
                      使われだしてどのくらいたつのだろう。
                               どんどん進化してものすごい能力を持ったパソコン。
                            どこに行ってもパソコンなしでは何も進まない。
                               パソコンさえあれば個人の世界もかなり広げられる。
                              ひとつのスパンをそのまま保存できるからだが・・・。
                          パソコンのない時代記録として残せるのは、
                     ひとつのスパンの核だけだったろう。
                        かなり小さいものだったに違いない・・・。
                       それがパソコンの登場と進化によって、
                            ひとつのスパンをそのまま残せるようになった。
                                   今あるものをパソコンに収めてゼロの自分から始められる。
             また始めることもなく、
                       そのまま白紙になっていることもできる。
                    いろんな不思議な人間が現れて、
                        それがおかしくない状況ではあるわけだ。





主催者吟

地震来て停電の夜の朧月

節電の薄暗き町カラス鳴く

桜咲く猫の逢瀬や回り道

被災地に桜ついばむメジロかな

カーテンの日差しも揺れて春立つ日



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