渡辺さんの俳句傑作選







2011年 4月の俳句






花冷えや電子書籍の西行伝
                     西行と言えば武士に生まれながら、
                世俗を捨てた昔の歌人だ。
                     飄々とした旅姿を思い起こさせる。
                           そういう人物を今や電子書籍で読む時代だ。
                           どう読むかはだれも規定したわけではないが、
                             ちょっと古めの人間だと実際に本を手に取って、
                              じっくり読み込みたいという気分がまず存在する。
                              電子という言葉がなんか軽い印象を受けるのだ。
                               読めれば物には関係ないと言われればそれまでだ。
                          しかし、人間というのは感性の動物であり、
                           紙というのは子供のころからの手触りがある。
                  電子書籍に手触りはない・・・。
                               西行という人物はやはり紙の手触りで読みたいな。








昼ドラの最中恋の猫帰る
              お昼のドラマと言えば、
                    昔の言葉になったのかもしれない、
                  よろめきドラマとすぐ連想する。
                                   金色夜叉の世界を連綿と受け継いでるのがこの時間帯だ。
                              21世紀に入ってどう変わったのかかわらないのか、
            実はわからない・・・。
                             まずこの時間帯のドラマを見たことがないからだ。
                             そういうと端から見下してるような印象になるが、
          そうではない・・・。
                            そういう時間帯は普通仕事をしている時間帯で、
                    ドラマを見るべき場所にはいない。
                   じゃ、どういう人種が見てるのか、
                想像におまかせしたい・・・。
                 今は猫も恋に落ちる季節・・・。
                              人間を含めた動物の恋の気分を起こさせる季節だ。
                              金色夜叉の時代から何も変わらんということだろう。








幕末へタイムスリップ四月馬鹿
           四月馬鹿と言えば、
                     エイプリールフールを思い浮かべる。
                         要するに嘘をついても許されるという日だ。
                 どんな嘘が面白いだろう・・・。
                           あまり極端な嘘だと迷惑千万になりかねない。
                                しかし、嘘のような現実的な話というのはあったと思う。
             東北太平洋大地震だ。
                                 これはしかし4月馬鹿という日から外れてしまったためか、
                       ウソではなくまことになってしまった・・・。
               ちょっと残念なパターンだ。
                      しかし、政府がもたもたしている間に、
                アメリカ太平洋艦隊の空母、
                       「ロナルド・レーガン」が宮城沖に現れた。
                     駆逐艦を従えてあっという間に上陸、
        救援活動開始。
                             飛行場もあっという間に使えるようにしてしまった。
                                これこそ幕末の黒船が現代に置き換わっただけだ・・・。
                 ウソのようなホントの話だ・・・。








春愁やペットショップに人溢れ

          寒い冬が過ぎて、
           寒さの峠を越えて、
                春の陽気が街を包む頃・・・。
                          人は外に出ようという気分が強くなってくる。
                     休日にカラッと晴れて気温が上がり、
                     厚手のオーバーがいらないとなれば、
                               外にふらりと出たくなるのが人間の感性というものだ。
                               しかし、外に出るのも一人で出るようじゃ心もとない。
                         というよりなんかもの足りなさがあるものだ。
                   子供と奥さんとという手もあるが、
             ある程度までだろう・・・。
                           そこでクローズアップされてくるのが犬のペット。
                            ネコは首輪つけて一緒に外出はない動物だから、
                 ここはやはりワンコだろう・・・。
                              ワンコだとなんだか素直なぬくもりを感じられるから、
                   散歩にはもってこいというわけだ。
                               まあ、季節柄ペットショップの稼ぎ時ということだろう。
                    夏と冬はお客は減るんだろうな・・・。








電動の椅子に落花のおしよせて
                            電動の椅子で街をゆく人も最近目についてきた。
               足が不自由だったりすると、
                    この電動椅子の出番となるわけだ。
                      主にお年寄りが多いかもしれない・・・。
                 歩いてると花が散ってきても、
                       体にとどまるということはないわけだが、
                      椅子だと止まっている面積が広い・・・。
              そこに花弁が散ってきて、
               そのまま居座っていく・・・。
                        桜が散る時期は花弁で埋まっていく・・・。
            盛りを過ぎた花弁が、
                   盛りを過ぎた人に落ちていく・・・。
                   花が散るのは侘びしいものだが、
                      歩くのが早ければ花弁はつかない・・・。





主催者吟

旅立ちの順番を待つ綿毛かな

横たわる母にとどけり春朝陽

花落とし茎だけ並ぶチューリップ

寝るややに娘重ねて雛祭り

花を食う虫見つけたり春立つ日




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