「映画でひとこと」−『クール・ランニング』 (初出 2003/6/22〜27) 久々に映画のレビューなぞ。 『ショーシャンクの空に』に引き続き、やはりHN:Stekingからプレゼントしてもらった『クール・ランニング』のDVDを観ました。 実に観るのは四度目で、おそらく三年ぶりくらいでしょうか。 前三回は三回とも泣いてしまったという、私にとっての感動作であります。 なんとか今回はウルウルするくらいですみましたが。 1988年のカルガリー冬季オリンピックに出場した、ジャマイカのボブスレーチームの実話を元にしたお話。 ジャマイカは常夏の南国。 雪など降るわけもなく、それでボブスレーに挑戦するんですから、まぁドタバタコメディーになるであろうことは想像に難くないですよね。 とにかくプロットは非常にわかりやすいです。 もう頭からっぽにして観れますし、お子様にもオススメできるくらいです。 製作がウォルト・ディズニーということもあるんでしょう。 そりゃもう単純明快。 でも最後には感動できるという。 うーん、いい作品じゃありませんか。 単純明快なドタバタコメディぶりは、私ももう四度目だからなのか、それとも単に年をとってしまったからなのか、今回はそんなに笑えませんでした。 笑うというより、ほほえましく思ってしまう、そんな感じでしょうか。 初めて観たのは20歳前後のときで、そのときは結構笑えたような記憶がありますが。 この映画、観終わったときの爽快感も大きいし、感動もできます。 が、じゃあテーマは何なの?と自問すると、なかなか答がでてきません。 ほんとに何なんでしょう? よく考えてみると、ただ一つコレ!っていうのはないんですけど、いろんなエピソードにいろんなテーマが散りばめられている感じなんです。 感動テーマのてんこ盛り、ってところですか。 一つには「最後まであきらめず、努力して夢をかなえる」ということ。 自分で書いてても”さぶいぼ”でるくらいクサイテーマですが、これがなかなか。 南国チームがウィンター・スポーツに挑戦するわけですから、当然あらゆる困難が待ちうけています。 それでも諦めない、そして夢に向かって前進していくその姿。 それが辛気臭いわけではなく、南国の陽気さも加わって、それほど押しつけがましくないんです。 主人公のデリースの行動もそうだし、ジュニアがユルに「諦めるな」と話すところもこのテーマが強く出ているところでしょう。 次にパトリオティズムとアイデンティティの確立、でしょうか。 予選でいい結果がでなかったあと、サンカがこう言います。 「ジャマイカはジャマイカ流にやるべき。スイス(強豪国)の真似をするな」と。 そして「おれらはおれらでいいんだ」と。 ジャマイカ人であることを誇りとし、自分の個性を認め、決してそれを変えない。 スイスの真似をしてやっていたスタートの仕方をジャマイカ流に戻し、その結果非常に速くスタートを切れるというエピソードは、自分をしっかりと持つことと愛国心の大切さが表現されています。 三つ目は大人よりも子ども向けのテーマですが、親からの自立、です。 ジュニアはなかなか親から自立できず、いつも父親に逆らえずにいました。 しかしユルに「お前は男だろうが」みたいな訓示を受け(というより鏡を使った洗脳みたいな感じでしたが)、オリンピックから連れ戻すために来た父親をきっぱりとはねのけます。 これはこれでなかなか感動できるエピソードでした。 四つ目はスポ根ものには不可欠なスポーツマンシップです。 過去に不正を犯したコーチが、ゴールに着けば勝つことよりも大事なことがわかる、とデリースに言います。 そして最後のコーナーでソリの故障によって事故を起こしたジャマイカチームは、ソリを運んで自分たちの足でゴールします。 勝ち負けじゃない、最後までやりぬくことの大事さ。 やっぱりかなり臭く聞こえますが、それでもいいもんです。 それから、それぞれが全く違った個性を持つチーム四人の、競技を通じて育っていく友情。 個性が全く違うがゆえに、それぞれの足らないところを補っていき、互いに成長していく過程は、感動できますし、またお話として非常によくできています。 これらのテーマに沿ったエピソードが、怒涛の如く連なっていて、まさに感動の波状攻撃(笑)。 なんだか一貫して一つのテーマは持てていないように感じるとも言えますが、ラストは大感動してしまいます。 他に感動できることの理由の一つには、『猟奇的な彼女』のところでも触れましたが、コメディで軽いノリで笑わせておいて、フッと感動できるお話を持ってくると、気がゆるんだスキを突かれて感動してしまう、という「吉本新喜劇」的な構成を取っているということもあるでしょう。 わかりやすいドタバタコメディ+感動、というこの構成は、私の”『クール・ランニング』=吉本新喜劇”論の根拠であります(映画でひとこと『猟奇的な彼女』参照)。 観たことのない人は是非一度観てみてください。 ただ、表現があまりに単純でストレート過ぎるので、ある程度の年齢を越えると受けつけないでしょうねぇ。 こっ恥ずかしくて。 それでもテンポもいい、尺も丁度いい、最後には感動できて爽快感ゲットとくれば、私はオススメせずにはいられません。 プロフィールのところにも載せていますが、私のお気に入り映画の一つです。 (映画データ) 『クール・ランニング』(米) 原題:『Cool Runnings』 公開:1993年 監督:ジョン・タートルトーブ 製作:ドーン・スティール 出演:リオン、ダグ・E・ダグ、ジョン・キャンディ 管理人お気に入りポイント(★=1、☆=0.5。最高5): ★★★★☆ |